皮膚科で処方されるクリームや、ドラッグストアの保湿剤のパッケージで「ヘパリン類似物質配合」という表示を目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。
乾燥肌や肌荒れのケアに使われる成分だとはわかっていても、セラミドとは何が違うのか、よく耳にするヒルドイドと同じものなのか、疑問に感じる方も多いはずです。
一言でいえば、ヘパリン類似物質とは体内のヘパリンという物質に似た構造を持ち、保湿・抗炎症・血行促進の働きを兼ね備えたスキンケア成分です。
この記事では、ヘパリン類似物質の意味や働きの仕組み、使われる製品の種類、セラミド・ヒルドイドとの違いについてわかりやすく解説します。
ヘパリン類似物質とは
ヘパリン類似物質とは、体内に存在するヘパリンという物質に似た化学構造を持つ成分のことです。
ムコ多糖類(グリコサミノグリカン)という糖の一種に分類され、高い保湿力を持つことで知られています。
皮膚科で処方される医薬品のほか、医薬部外品や化粧品にも配合され、乾燥肌のケアに幅広く使われている成分です。
保湿だけでなく、炎症を抑えたり血行を促したりする働きも併せ持つ点が、この成分の大きな特徴といえます。
⚠️ 健康・医療に関する大切なお知らせ
このページは一般的な情報をわかりやすくまとめたものです。症状や治療など健康に関する判断は自己判断せず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。
参考: 厚生労働省 / e-ヘルスネット(厚労省) / MSDマニュアル家庭版 / 難病情報センター
ヘパリンとはどのような物質か
ヘパリン類似物質の名前のもとになっているヘパリンとは、体の中でつくられる天然の物質です。
血液が固まりすぎるのを防ぐ働きを持ち、血管の中で血液がスムーズに流れるよう調整する役割を担っています。
医療の現場では、血栓を防ぐための薬としてヘパリンそのものが使われることもあります。
ヘパリン類似物質は、このヘパリンと似た構造を持つように作られた成分であり、血液を固まりにくくする作用はごく弱く、主に皮膚のケアを目的に利用されています。
ヘパリン類似物質の名前の由来
「類似物質」という名称は、ヘパリンと構造が似ているものの、まったく同じ物質ではないことを表しています。
皮膚に塗る用途に合わせて、保湿や血行促進の働きが生かされるように整えられた成分という位置づけです。
血液凝固を抑える作用が強く出てしまうと出血しやすくなるおそれがあるため、スキンケア用途では保湿や血行促進の面が重視されています。
ヘパリン類似物質の保湿の仕組み
水分を抱え込む性質
ヘパリン類似物質は、分子の中に水分を引き寄せて抱え込む性質を持っています。
この性質により、肌の表面だけでなく真皮と呼ばれる肌の内側の層にも水分を届けやすいとされています。
保湿力の高さ
保湿成分の中でも、セラミドやヒアルロン酸と並んで保湿力が高い成分として紹介されることが多くあります。
乾燥によって肌がカサつきやすい方や、肌のバリア機能が低下している方のケアに向いているとされています。
ヘパリン類似物質の抗炎症・血行促進の仕組み
炎症を抑える働き
ヘパリン類似物質には、肌の炎症を鎮める働きがあるとされ、赤みやかゆみを伴う肌荒れのケアに使われます。
血行を促す働き
毛細血管の血流を改善する働きも報告されており、血行が滞りがちな部分のケアにも用いられています。
血行が整うことで、肌のターンオーバーと呼ばれる新陳代謝のサイクルを助けると考えられています。
ヘパリン類似物質の主な作用
ここまでの内容を踏まえると、ヘパリン類似物質には主に次のような作用があるとまとめられます。
- 水分を抱え込み、肌の乾燥を防ぐ保湿作用
- 肌の赤みやかゆみなどの炎症を抑える抗炎症作用
- 毛細血管の血流を促す血行促進作用
- コラーゲンを作る細胞の働きを助けるとされる作用
一つの成分でこれだけ多くの働きが期待されている点が、医療・美容の両方で広く使われている理由といえます。
ヘパリン類似物質が配合された製品の種類
ヘパリン類似物質は、剤形と呼ばれる製品の形状によって使い心地が異なります。
| 剤形 | 特徴 |
|---|---|
| クリーム | のびが良く、しっとりとした使用感が特徴 |
| ローション | さらりとして広い範囲に塗りやすい |
| フォーム | 泡状で肌にのせやすく、べたつきを抑えやすい |
| ゲル | みずみずしく、べたつきが少ない使用感 |
医療機関で処方される製品のほか、ドラッグストアで購入できる医薬部外品や化粧品にも同じ成分が配合されています。
ただし成分の濃度や添加されている他の成分は製品ごとに異なるため、目的に合わせて選ぶことが大切です。
ヘパリン類似物質はどんな症状に使われる?
ヘパリン類似物質が配合された医薬品は、皮膚科でさまざまな症状のケアに処方されています。
- 乾燥肌やひび割れなどの乾燥症状
- アトピー性皮膚炎に伴う皮膚の乾燥
- しもやけによる血行不良
- 打撲や捻挫の後に残るうっ血や腫れ
- 手術のあとにできるケロイドや傷あとのケア
保湿と血行促進の両方の働きが期待できるため、乾燥だけでなく血流に関わる症状にも使われている点が特徴です。
ヘパリン類似物質とセラミドの違い
セラミドは、肌の角質層にもともと存在する脂質の一種で、肌の水分を逃さないふたのような役割を担っています。
一方でヘパリン類似物質は、糖の仲間であるムコ多糖類に分類され、水分を引き寄せて抱え込む性質を持っています。
| 項目 | ヘパリン類似物質 | セラミド |
|---|---|---|
| 分類 | ムコ多糖類 | 脂質 |
| 主な働き | 保湿・抗炎症・血行促進 | 水分の蒸発を防ぐバリア機能 |
| 由来 | ヘパリンに似た構造を持つ成分 | もともと角質層に存在する成分 |
どちらも保湿成分として知られていますが、水分を抱え込むヘパリン類似物質と、水分を逃さないセラミドでは、働き方の方向性が異なっています。
ヘパリン類似物質とヒルドイドの違い
ヒルドイドとは、ヘパリン類似物質を主な成分とする医療用医薬品の製品名です。
つまり、ヘパリン類似物質は成分の名前であり、ヒルドイドはその成分を含む医薬品の商品名という関係になります。
ヒルドイド以外にも、同じ成分を含む医薬品が複数のメーカーから販売されており、含まれる成分としての働きはおおむね共通しています。
市販のスキンケア製品に配合されているヘパリン類似物質は、医療用医薬品であるヒルドイドとは濃度や承認の区分が異なる場合があるため、同じものと考えないよう注意が必要です。
ヘパリン類似物質を使う際の注意点
ヘパリン類似物質は比較的穏やかな成分とされていますが、使い方によっては注意が必要な場合があります。
- 皮膚に傷や出血がある部位への使用は避けたほうがよいとされる
- 血液が固まりにくい体質の方は使用前に相談が望ましい
- 医療用医薬品として処方された場合は、使用量や期間を自己判断で変えない
- 市販品を使っていて肌に異常を感じたら使用を中止する
アトピー性皮膚炎やケロイドなど症状が続いている場合は、自己判断で市販品だけに頼らず、皮膚科など専門機関に相談することをおすすめします。
ヘパリン類似物質によくある誤解
ヘパリン類似物質について、誤解されやすい点もいくつかあります。
一つは、ヒルドイドと市販の保湿クリームを同じものとして扱ってしまう誤解です。
成分名は同じでも、濃度や製品設計、承認の区分が異なるため、効果の現れ方も一様ではありません。
もう一つは、保湿のためだけの成分だという誤解です。
実際には血行促進や抗炎症の働きも併せ持つため、保湿以外の目的で処方されることも少なくありません。
まとめ
ヘパリン類似物質とは、体内のヘパリンに似た構造を持つムコ多糖類の一種で、保湿・抗炎症・血行促進といった複数の働きを持つ成分です。
セラミドが水分の蒸発を防ぐ脂質であるのに対し、ヘパリン類似物質は水分を抱え込む性質を持つ点に違いがあります。
また、ヒルドイドはヘパリン類似物質を含む医薬品の商品名であり、成分そのものを指す言葉ではない点も押さえておきたいポイントです。
乾燥肌や肌荒れが続く場合は、市販品だけで対応しようとせず、皮膚科など専門機関に相談しながら自分に合ったケアを選んでいくとよいでしょう。


コメント