過可動性スペクトラム障害(HSD)とは?症状・原因・診断・治療についてわかりやすく解説

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過可動性スペクトラム障害(HSD:Hypermobility Spectrum Disorder)は、関節が通常より大きな範囲で動く「関節過可動性」があり、それに関連して痛みや関節の不安定性などの問題が生じている状態を指します。

関節が柔らかいこと自体は珍しいものではなく、関節過可動性があっても症状がなければ、必ずしも病的な状態とは判断されません。

この記事では、過可動性スペクトラム障害の特徴や症状、評価方法、過可動型エーラス・ダンロス症候群(hEDS)との違い、治療・管理について解説します。

過可動性スペクトラム障害とは

過可動性スペクトラム障害は、関節過可動性に関連した筋骨格系の症状などがあり、それをほかの疾患では十分に説明できない場合に検討される診断概念です。

人間の関節が動く範囲には個人差があります。生まれつき関節が柔らかい人もいれば、ダンスや体操などのトレーニングによって高い柔軟性を獲得している人もいます。

そのため、「関節がよく曲がる=HSD」というわけではありません。

関節の過可動性に加えて、慢性的な痛み、関節の不安定性、繰り返すけがなど、身体的な問題が生じているかどうかが重要になります。

関節過可動性とは

関節過可動性とは、関節が一般的な可動域を超えて動く状態です。

例えば、肘や膝が通常より後方へ大きく反ったり、指の関節が大きく曲がったりする場合があります。

関節過可動性は必ずしも異常ではありません。症状のない関節過可動性は健康な人にもみられます。

一方、過可動な関節を支える筋肉や周辺組織に負担がかかり、痛みや不安定性などにつながることがあります。このような問題が継続する場合にはHSDが検討されます。

過可動性スペクトラム障害の主な症状

HSDの症状や程度には大きな個人差があります。

代表的な問題として挙げられるのが関節や筋肉の痛みです。関節が不安定なため、周囲の筋肉が関節を安定させようとして負担を受け、痛みにつながる場合があります。

また、関節の不安定感がみられたり、捻挫などのけがを繰り返したりすることがあります。人によっては亜脱臼や脱臼を経験することもあります。

運動や日常生活による身体的負荷によって、症状が強くなるケースもあります。

ただし、こうした症状はHSDだけに特有のものではありません。ほかの整形外科的疾患などでも生じるため、症状だけでHSDと判断することはできません。

関節過可動性の評価に使われる「Beightonスコア」

関節過可動性を評価する方法の一つに「Beighton(ベイトン)スコア」があります。

これは、肘、膝、手指、体幹などの特定の動作を確認し、全身性の関節過可動性の程度を点数化する方法です。

最大9点で評価されます。

ただし、Beightonスコアは関節過可動性を評価するための指標であり、HSDそのものを診断する検査ではありません。

年齢、性別、過去の関節可動性、現在の症状なども含めて総合的に評価する必要があります。

また、Beightonスコアで評価される関節は限られているため、肩や股関節、足首など別の部位の過可動性についても必要に応じて確認されます。

過可動性スペクトラム障害の分類

HSDは、関節過可動性がみられる範囲などによって分類されることがあります。

全身の複数の関節に過可動性がみられる「全身性HSD(G-HSD)」、一部の関節に限られる「局所性HSD(L-HSD)」、手や足など末梢の関節を中心とする「末梢性HSD(P-HSD)」などがあります。

また、過去には全身性の関節過可動性があったものの、加齢やけがなどによって現在は基準を満たさなくなっている場合に「歴史的HSD(H-HSD)」という分類が用いられることがあります。

どのタイプでも、単なる関節の柔軟性ではなく、過可動性に関連する症状が存在することがポイントです。

過可動型エーラス・ダンロス症候群(hEDS)との違い

HSDについて調べる際によく登場するのが「過可動型エーラス・ダンロス症候群(hEDS:hypermobile Ehlers-Danlos syndrome)」です。

hEDSとHSDは、関節過可動性や筋骨格系の症状など、共通する特徴があります。

しかし、HSDとhEDSは同じ診断ではありません。

hEDSには定められた診断基準があり、全身性関節過可動性に加えて、特定の全身的特徴、家族歴、筋骨格系の合併症などを評価し、ほかの疾患を除外したうえで診断されます。

hEDSの診断基準を満たさないからといって、HSDの症状が軽いという意味でもありません。HSDでも日常生活に大きな影響を受けることがあります。

過可動性スペクトラム障害の原因

HSDには関節やその周囲組織の特性など複数の要素が関係すると考えられていますが、すべてのHSDに共通する単一の原因が特定されているわけではありません。

関節の安定性には、靱帯や関節包などの組織だけでなく、筋力や神経による運動制御など、さまざまな要素が関係しています。

そのため、関節の可動域が大きいことに加え、筋力や身体のコントロールなどの要素が組み合わさることで症状につながる場合があります。

過可動性スペクトラム障害はどのように診断される?

HSDの診断では、関節の可動性だけでなく、現在の症状や過去の状態などを総合的に評価します。

医療機関では、どの関節に過可動性があるのか、いつから痛みがあるのか、捻挫・脱臼などを繰り返していないか、日常生活や運動にどの程度影響しているかといった情報が確認されます。

重要なのは、HSDと似た症状を生じるほかの疾患を適切に鑑別することです。

エーラス・ダンロス症候群を含む遺伝性結合組織疾患、リウマチ性疾患、神経筋疾患、その他の整形外科的な問題などが検討される場合があります。

したがって、自己判断だけでHSDと決めつけることは適切ではありません。

過可動性スペクトラム障害の治療・管理

HSDの管理では、症状や身体の状態に合わせた個別的な対応が重要です。

特に重要なのが、関節を安定させるための筋力や身体コントロールの改善です。

理学療法や適切な運動によって、関節周囲の筋力、姿勢、バランス、固有感覚などを改善することが検討されます。

固有感覚とは、自分の関節がどの位置にあるのか、どの程度動いているのかなどを認識する身体感覚です。

HSDでは単純に「体を柔らかくする」ことを目的とするのではなく、過剰に動く関節を適切にコントロールし、安定した動作を身につけることが重要になります。

ストレッチや運動をするときの注意点

関節過可動性がある人の場合、柔軟性を高めるためのストレッチが必ずしも適しているとは限りません。

すでに可動域が大きい関節を必要以上に動かすことで、症状を悪化させる可能性があります。

一方で、HSDだから運動を避けるべきというわけでもありません。適切な運動は筋力や身体コントロールを改善し、関節の安定性を高めるために役立つことがあります。

どの程度の運動が適切なのかは、症状や関節の状態によって異なります。痛みや関節不安定性が強い場合には、医師や理学療法士などの専門家と相談しながら運動内容を調整することが重要です。

医療機関を受診したほうがよいケース

「昔から体が柔らかい」というだけで医療上の問題があるとは限りません。

しかし、関節や筋肉の痛みが長期間続いている、捻挫を頻繁に繰り返す、関節が抜けそうな感覚がある、亜脱臼や脱臼を繰り返す、運動や日常生活に支障が出ているといった場合には、医療機関への相談を検討するとよいでしょう。

症状によっては整形外科などで評価を受け、必要に応じてほかの診療科や専門家につなげてもらう方法があります。

まとめ

過可動性スペクトラム障害(HSD)は、関節が通常より大きく動く関節過可動性があり、それに関連して痛みや関節の不安定性などの問題が生じている状態を表す診断概念です。

重要なのは、単に「体が柔らかい」というだけではHSDではないという点です。症状のない関節過可動性は健康な人にもみられます。

HSDの評価ではBeightonスコアなどが使用されますが、それだけで診断されるわけではありません。症状、既往歴、関節の状態などを確認するとともに、似た症状を示すほかの疾患を除外することが必要です。

また、過可動型エーラス・ダンロス症候群(hEDS)とは共通する特徴がありますが、別の診断です。

HSDの管理では、過度に柔軟性を高めることよりも、筋力や固有感覚、姿勢・動作のコントロールを改善し、関節を安定させることが重要になります。

関節痛や脱臼などを繰り返している場合や、関節の柔らかさによって日常生活に支障が生じている場合には、自己判断せず医療機関で適切な評価を受けることが大切です。

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