「破産」とは、借金などの債務を支払えなくなった場合に、法律に基づいて財産関係を清算するための手続です。
一般には「借金が返せなくなった状態」という意味で使われることもありますが、法律上の破産は裁判所が関与して行われる正式な手続を指します。
また、「破産すればすべての借金が自動的になくなる」「破産するとすべての財産を失う」といったイメージがありますが、必ずしも正確ではありません。
この記事では、破産の意味や仕組み、自己破産、免責、法人破産、倒産との違いなどをわかりやすく解説します。
破産とは
破産は、債務者が借金などの債務を支払えなくなった場合に、債務者の財産を清算して債権者への配当などを行う法的な手続です。
日本では主に「破産法」という法律に基づいて手続が行われます。
破産手続では、債務者の財産を調査し、必要に応じて売却するなどして金銭に換えます。このように財産を金銭に換えることを「換価」といいます。
換価によって得られた金銭は、法律で定められたルールに従って債権者に配当されます。
破産は単純に借金をなくすためだけの制度ではなく、支払いが困難になった債務者の財産関係を法律に従って清算するための制度です。
自己破産とは
自己破産とは、債務者自身が裁判所に破産手続開始の申立てを行うことです。
個人がクレジットカード、カードローン、住宅ローン、事業上の借入れなどを返済できなくなり、自ら破産を申し立てるケースなどが該当します。
一般的には「破産」と「自己破産」がほぼ同じ意味で使われることもありますが、厳密には異なります。
破産は法律上の清算手続を指し、自己破産は債務者自身がその破産手続を申し立てることを意味します。
破産が認められる主な条件
個人の破産では、単純に「借金が多い」というだけで破産手続が開始されるわけではありません。
重要になるのが「支払不能」の状態にあるかどうかです。
支払不能とは、債務者が支払能力を欠き、弁済期にある債務について一般的かつ継続的に支払うことができない状態をいいます。
そのため、同じ金額の借金があったとしても、収入や財産、生活状況などによって判断が異なる可能性があります。
裁判所は申立てを受けると、債務や財産などの状況を確認し、法律上の要件を満たしていると判断した場合に破産手続開始決定を行います。
破産すると借金はなくなるのか
個人の自己破産で特に重要なのが、「破産手続開始決定を受けただけでは、残った債務の支払責任がなくなるわけではない」という点です。
破産手続は基本的に財産を清算するための手続です。
残った一定の債務について支払責任を免れるためには、原則として裁判所から「免責許可決定」を受け、その決定が確定する必要があります。
つまり、個人の自己破産では「破産」と「免責」を区別して考える必要があります。
免責とは
免責とは、破産手続による配当などを行った後も残った一定の債務について、破産者の支払責任を免除する制度です。
免責許可決定が確定すると、対象となる債務について原則として支払義務を負わなくなります。
この免責制度があることで、債務を返済できなくなった個人が経済生活を立て直すことが可能になります。
ただし、すべての債務が免責の対象になるわけではありません。
自己破産しても免責されない債務
破産法では、免責許可決定を受けても支払責任が残る債務が定められています。
このような債務は「非免責債権」と呼ばれます。
代表的なものには、税金などの租税等の請求権、罰金等、一定の損害賠償請求権、養育費などがあります。
また、破産者がその存在を知りながら債権者名簿に記載しなかった一定の債務についても、免責の対象にならない場合があります。
そのため、「自己破産をすればあらゆる支払いがなくなる」という理解は正確ではありません。
免責が許可されない場合もある
自己破産を申し立てれば必ず免責が認められるわけではありません。
破産法では「免責不許可事由」が定められています。
たとえば、債権者を害する目的で財産を隠したり、不当に処分したりした場合などは、免責が認められない原因となることがあります。
浪費やギャンブルなどによって著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したりした場合も、免責不許可事由に該当する可能性があります。
ただし、免責不許可事由が存在する場合でも、事情を考慮して裁判所の裁量によって免責が許可されることがあります。
破産管財人とは
破産手続では、裁判所によって「破産管財人」が選任されることがあります。
破産管財人には通常、弁護士が選任されます。
破産管財人は、破産者の財産を調査・管理し、必要に応じて財産を換価して債権者への配当などを行います。
また、個人の自己破産では、免責に関係する事情について調査する場合もあります。
破産手続を適正かつ公平に進めるうえで重要な役割を担う存在です。
同時廃止とは
個人の自己破産では、債権者への配当などに充てられる財産がほとんどない場合があります。
破産手続の費用を支払えるほどの財産がなく、破産管財人による調査なども必要ないと判断された場合には、破産手続開始決定と同時に破産手続を終了することがあります。
これを「同時廃止」といいます。
ただし、財産が少なければ必ず同時廃止になるわけではありません。
財産や借金が生じた経緯などについて調査が必要な場合には、破産管財人が選任されることがあります。
破産するとすべての財産を失うのか
自己破産については「すべての財産を没収される」というイメージを持たれることがありますが、すべての財産が処分されるわけではありません。
破産後の生活に必要となる一定の財産については、法律上、破産者の手元に残すことが認められています。
一方、不動産など一定以上の価値を持つ財産については、破産手続の中で換価され、債権者への配当などに充てられる可能性があります。
どの財産が破産手続の対象になるかについては、財産の種類や価値、個別の状況などによって異なります。
破産すると仕事ができなくなるのか
破産したことだけを理由として、すべての仕事ができなくなるわけではありません。
一般的な会社員などについて、破産したことだけを理由に一律に仕事ができなくなる制度ではありません。
ただし、破産手続開始決定を受けてから復権するまでの間、一部の資格や職業などについて法律上の制限を受ける場合があります。
免責許可決定が確定するなどして復権すると、このような資格制限は原則として解消されます。
破産すると家族も借金を負うのか
本人が自己破産したからといって、その借金が自動的に配偶者や子どもなどの家族へ移るわけではありません。
借金は原則として契約した本人の債務です。
ただし、家族が連帯保証人や保証人になっている場合などは別です。
主債務者が自己破産しても保証人などの支払義務が当然になくなるわけではないため、債権者から保証人などへ請求される可能性があります。
個人の破産と法人の破産
破産は個人だけを対象とした制度ではありません。
株式会社などの法人についても破産手続があります。
個人の破産
個人の破産では、財産を清算するとともに、免責制度によって一定の債務について支払責任を免れることが重要な目的の一つとなります。
破産後も本人の生活は続くため、経済的な再出発を可能にする仕組みが設けられています。
法人の破産
会社などの法人が支払不能などの状態になった場合にも、破産手続が利用されることがあります。
法人が保有する財産を調査・換価し、法律に従って債権者への配当などを行います。
個人の自己破産とは異なり、法人については破産手続による清算を経て最終的に法人格が消滅することになります。
破産と倒産の違い
「破産」と「倒産」は似た意味で使われますが、同じものではありません。
破産は、破産法に基づいて裁判所で行われる法的手続です。
一方、倒産は、一般的に企業などが債務を支払えなくなったり、事業の継続が困難になったりした状態を表す言葉として使われます。
倒産は特定の一つの法的手続の名称ではありません。
企業が経営上行き詰まった場合でも、破産ではなく民事再生や会社更生など、別の法的手続によって再建を目指すケースがあります。
そのため、「倒産した会社=必ず破産した会社」とは限りません。
破産と民事再生の違い
破産と民事再生は、どちらも債務問題を処理するための法的手続ですが、その目的には大きな違いがあります。
破産は基本的に財産を処分して債務関係を清算する「清算型」の手続です。
一方、民事再生は、債務を一定のルールに従って整理しながら事業や生活の再建を目指す「再建型」の手続です。
個人を対象とした民事再生手続として「個人再生」もあります。
個人再生では、法律上の要件を満たしたうえで再生計画に従って債務を返済していきます。
自己破産と個人再生のどちらが適しているかは、収入、債務額、財産などによって異なります。
破産と任意整理の違い
借金問題を解決する方法には、破産以外に「任意整理」と呼ばれる方法もあります。
任意整理は、裁判所による破産手続とは異なり、債権者との交渉によって返済条件などを調整する方法です。
自己破産では一定の財産が処分の対象となる可能性がありますが、任意整理では基本的に合意した条件に従って返済を継続します。
ただし、任意整理を利用できるかどうかは、債務額や収入、債権者との交渉結果などによって異なります。
破産は経済的な再出発のための制度でもある
「破産」という言葉には強いマイナスイメージがありますが、破産制度には債権者への公平な配当だけでなく、個人の経済的な再出発を可能にする役割があります。
返済できる見込みがないにもかかわらず債務を抱え続ければ、生活そのものが成り立たなくなる可能性があります。
そこで、一定の条件のもとで財産関係を整理し、免責制度によって一定の債務の支払責任を免除する仕組みが設けられています。
一方で、債権者の権利にも配慮する必要があるため、財産の調査や換価、免責に関する審査などが法律に基づいて行われます。
まとめ
破産とは、債務を支払うことができなくなった場合に、裁判所を通じて財産関係を清算する法的な手続です。
債務者本人が破産を申し立てることを「自己破産」といいます。
個人の場合、破産手続開始決定だけで残った借金の支払責任が自動的になくなるわけではなく、原則として免責許可決定を受け、その決定が確定することが必要です。
また、税金や一定の損害賠償債務、養育費など、免責されない債務もあります。
破産は「借金を帳消しにするだけの制度」ではありません。債務者の財産を法律に従って清算し、債権者への公平な配当を図るとともに、個人については経済的な再出発を可能にするための重要な法制度です。


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