旅行番組やニュースで、ノルウェーなど北欧の美しい海岸風景を紹介するときに「フィヨルド」という言葉を見聞きすることがあります。
険しい崖に囲まれた入り江のような景色を見て、普通の湾や入り江と何が違うのか気になった方も多いのではないでしょうか。
フィヨルドとは、ひとことで言うと、氷河が削った深い谷に海水が入り込んでできた、細長く入り組んだ地形のことです。
この記事では、フィヨルドの意味やできる仕組み、リアス海岸や湾との違いについてわかりやすく解説します。
フィヨルドとは
フィヨルドとは、氷河によって削られた深い谷に海水が入り込み、できあがった細長い入り江状の地形を指す言葉です。
両岸には高く険しい崖が連なり、奥行きが長く、海岸線がくねくねと入り組んでいる点が大きな特徴です。
見た目は普通の入り江や湾に似ていますが、できあがった過程が異なるため、地理の分野では別の言葉として扱われています。
フィヨルドの語源・由来
フィヨルドという言葉は、北欧で使われている言語がもとになっているとされています。
もともとは単に入り江や湾を指す日常の言葉だったものが、氷河地形を表す専門用語として世界各地の言語に取り入れられていったと考えられています。
そのため、同じ地形でも国や地域によって呼び方が異なる場合がありますが、学術的にはフィヨルドという呼び方が広く共通して使われています。
フィヨルドができる仕組み
フィヨルドが生まれる背景には、氷河期における氷河の動きが関わっています。
山や大陸の上に積もった氷は、自分の重さでゆっくりと低い場所へ流れ下っていきます。
この巨大な氷の塊が谷底や谷の側面を押しつぶしながら移動することで、地面が長い時間をかけて深く削られていきます。
やがて気候が変化して氷河が縮小・後退すると、削られた谷だけが地上に残ります。
その後、海面が上昇したり、周辺の地盤が沈んだりすることで、谷の奥深くまで海水が流れ込み、フィヨルドという地形が完成します。
フィヨルドの地形的な特徴
谷の断面がU字に近い形をしている
氷河は固い氷の塊で谷全体を押し広げるように削るため、谷の断面は底の広いU字形に近くなります。
両岸に険しい崖や山が連なる
削り残された部分が急な斜面として残るため、海岸の両側に高くそびえる崖や山が続きます。
奥まで水深が深い場所が多い
氷河は谷の奥に近づくほど厚く重くなる傾向があるため、入り口より内陸側のほうが深くなっている場所も見られます。
フィヨルドが見られる場所
フィヨルドという言葉自体はノルウェーの海岸を紹介する際によく使われ、代表的な景観として知られています。
ただし、同じような地形は、かつて氷河が広く発達していた高緯度の寒冷な地域であれば世界各地で見られます。
- 北欧(ノルウェーなど)の海岸
- グリーンランドやアイスランドの海岸
- 南米チリ南部の海岸
- ニュージーランド南島の海岸
- カナダやアラスカの海岸
気候や地質は地域ごとに異なりますが、氷河に深く削られた谷に海水が入り込むという成り立ちは共通しています。
フィヨルドとリアス海岸の違い
フィヨルドと混同されやすい地形に、リアス海岸があります。
どちらも海岸線が複雑に入り組んでいますが、地形ができた原因が大きく異なります。
フィヨルドは氷河が削った谷に海水が入り込んでできた地形であるのに対し、リアス海岸は雨や川の流れが大地を削った谷に海水が入り込んでできた地形です。
| 比較項目 | フィヨルド | リアス海岸 |
|---|---|---|
| 削った主体 | 氷河 | 河川の流れ |
| 谷の断面 | 底の広いU字に近い形 | 先がとがったV字に近い形 |
| 崖の険しさ | 非常に険しく高いことが多い | フィヨルドに比べると比較的なだらか |
| できる地域 | かつて氷河が発達した寒冷な地域 | 温暖な地域を含め広く見られる |
崖の険しさや谷の深さにも違いが出やすいため、景観の印象で見分けがつく場合もあります。
フィヨルドと湾の違い
湾とは、海岸線が内陸側に大きくへこみ、海が入り込んでいる場所を広く指す言葉です。
湾ができる原因はさまざまで、氷河によるもの、河川によるもの、地盤の動きによるものなど多岐にわたります。
つまり、フィヨルドは数多くある湾の成り立ちのうち、氷河の侵食によってできたものを指す、より限定された呼び方といえます。
フィヨルドは広い意味では湾の一種に含まれますが、すべての湾がフィヨルドというわけではない、という点を押さえておくとわかりやすくなります。
フィヨルドはどのように利用されている?
フィヨルドは、崖や山に囲まれた独特の景観から、観光地として利用されることが多い地形です。
奥まで水深が深い場所では大型の船も入りやすく、観光船で崖や滝を間近に眺めるツアーなどが各地で行われています。
また、周囲の山が風や波をさえぎるため海面が比較的穏やかになりやすく、漁業の拠点や港として使われている場所もあります。
景観の価値が高く評価され、世界遺産に登録されている海岸も一部に見られます。
フィヨルドについてよくある誤解
ノルウェーだけの地形ではない
フィヨルドという言葉はノルウェーの風景とともに紹介されることが多いため、北欧だけにある地形だと思われがちです。
しかし実際には、氷河が発達した条件が整えば、世界各地の海岸にフィヨルドが形成されます。
入り組んだ入り江ならすべてフィヨルドというわけではない
海岸線が複雑に入り組んでいるというだけで、すぐにフィヨルドと呼べるわけではありません。
氷河によって削られたという成り立ちがあることが、フィヨルドと呼ぶための条件になります。
フィヨルドを使った例文
- ノルウェーのフィヨルドは、険しい崖と深い水面が織りなす景観で知られています。
- このフィヨルドでは、観光船に乗って奥地の滝を見学することができます。
- 世界地図を見ると、南米やニュージーランドにもフィヨルドが分布していることがわかります。
- フィヨルドとリアス海岸は見た目が似ているため、授業で違いを問われることがあります。
まとめ
フィヨルドとは、氷河が削った深い谷に海水が入り込んでできた、崖に囲まれた細長い入り江状の地形のことです。
谷の断面がU字に近い形をしている点や、両岸に険しい崖が連なる点が、見分けるときの目印になります。
河川が削った谷に海水が入り込むリアス海岸や、成り立ちを問わない広い概念である湾とは、できる原因や断面の形で区別することができます。
ニュースや旅行の話題でフィヨルドという言葉に出会ったときは、氷河がつくり出した地形であることを思い出すと理解しやすくなります。


コメント