毎年冬に流行する「インフルエンザ」。その原因となるインフルエンザウイルスは A型・B型・C型・D型 の4種類に分類されます。本記事では、それぞれの特徴や違い、流行や予防のポイントまでを一気に整理します。
まずは全体像:4つの型の違い
| 型 | 主な宿主 | 流行の規模 | ヒトでの主な臨床像 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| A型 | ヒト+多くの動物(鳥・豚など) | 大規模(パンデミックあり) | 高熱・全身症状が強い | H(ヘマグルチニン)×N(ノイラミニダーゼ)の組合せで多数の亜型(例:H1N1、H3N2) |
| B型 | ヒトのみ | 中規模(季節性流行) | A型よりやや軽いことも | 系統としてビクトリア系統などが季節ごとに優勢交代 |
| C型 | ヒト(主に小児) | 小規模 | かぜ様の軽症が多い | 大流行はまれ、検査・報告も限定的 |
| D型 | 家畜(主にウシ等) | ―(ヒト感染は確認されず) | ― | 獣医学領域での研究対象 |
A型:季節流行の中心、パンデミックを起こす型
- 特徴:変異しやすく、世界的流行(パンデミック)の原因になり得ます。
- 宿主範囲:ヒトに加え、鳥や豚など多くの動物に感染。
- 亜型:表面タンパク質の組み合わせ(H×N)で細分化。代表例は H1N1、H3N2。
- 臨床像:高熱、頭痛、筋肉痛、強い倦怠感など全身症状が出やすい。
B型:毎年の季節流行で無視できない存在
- 特徴:ヒトのみに感染。季節ごとにB型が主流になる年もあります。
- 系統:遺伝的に異なる系統が存在し、年により優勢が入れ替わることがあります。
- 臨床像:A型より軽いこともありますが、高熱や合併症を起こすケースも。
C型:小児で軽症例が中心
- 特徴:かぜ様の軽い症状で済むことが多く、大規模流行はほぼなし。
- 検査:一般診療ではA・B型ほど積極的に検査対象にならないことが多いです。
D型:家畜で見られるインフルエンザ
- 特徴:ウシなど家畜に感染。
- ヒト:ヒトでの感染は確認されていません。主に獣医学分野の話題です。
変異の仕組み:なぜ毎年流行が起きるのか
- 抗原変異(ドリフト):少しずつ遺伝子が変わる現象。A・B型で起き、ワクチン株の見直しが必要になります。
- 抗原シフト:A型で見られる大きな組み換え。新しい亜型が生まれ、パンデミックにつながることがあります。
検査と診断:型による違い
- 迅速抗原検査:外来で数十分以内に結果が出る一般的な検査。多くはA・B型の判定。
- PCR:感度が高く、流行状況の把握や確定診断に有用。研究・公衆衛生分野ではC型などの検出にも利用。
- 臨床判断:流行期には症状・経過・接触歴で総合的に診断されることもあります。
ワクチンとの関係
- 対象:季節性ワクチンは通常、A型×2株+B型×2株(四価)が基本。
- 目的:重症化予防・入院予防、流行規模の抑制。感染そのものを100%防ぐものではない点に注意。
- C型・D型:一般的なヒト用ワクチンの対象外です。
型にかかわらず大切な予防
- 手洗い・手指衛生:外出後、食事前、帰宅時は石けん+流水で。
- 咳エチケット:マスクの適切な着用、咳・くしゃみ時の配慮。
- 室内環境:換気と適度な湿度(目安40–60%)を維持。
- 体調管理:睡眠・栄養・適度な運動で免疫力を保つ。
- ワクチン接種:重症化リスクの高い人(高齢者、基礎疾患のある方、妊娠中など)は積極的に検討。
- 具合が悪いとき:無理をせず早めの受診・休養。家庭内では同居家族への感染対策も。
よくある質問(FAQ)
Q. A型とB型、症状に差はありますか?
A. 一般にA型のほうが高熱や全身症状が強い傾向があります。ただし個人差が大きく、B型でも高熱や合併症が起こることがあります。
Q. 同じシーズンにA型とB型の“両方”にかかることは?
A. 可能です。流行期がずれたり、地域差があったりするため、別の時期に別型へ再感染することがあります。
Q. C型は放っておいて大丈夫?
A. かぜ様の軽症が多いですが、長引く発熱や呼吸症状があれば受診を。基礎疾患がある方や乳幼児・高齢者は特に注意してください。
Q. D型はヒトにうつりますか?
A. 現時点でヒト感染は確認されていません。獣医学領域の話題です。
まとめ
- インフルエンザは A・B・C・D の4種類。
- A型は変異が大きく、パンデミックの原因になり得る。
- B型も毎年の季節流行で重要。
- C型は小児中心に軽症が多く、大流行はまれ。
- D型は家畜での感染が主で、ヒト感染は確認されていない。
- 型を問わず、ワクチン・手洗い・換気・休養が予防と重症化抑制の基本です。

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