無人タクシーとは、運転席に人間のドライバーが乗車せず、自動運転システムによって乗客を目的地まで運ぶタクシーサービスです。「自動運転タクシー」や「ロボタクシー(Robotaxi)」と呼ばれることもあります。
海外ではすでに一部地域で商用サービスが展開され、日本でも自動運転技術の社会実装に向けた制度整備や実証が進められています。
無人タクシーはどのような仕組みで走行するのでしょうか。自動運転レベルとの関係や日本での現状、普及によって期待される効果、課題について解説します。
無人タクシーとは
無人タクシーは、自動運転システムが人間のドライバーに代わって車両を制御するタクシーです。
一般的なタクシーでは、ドライバーが周囲の道路状況を確認し、進路を判断してハンドルやアクセル、ブレーキを操作します。
無人タクシーでは、こうした「認知・判断・操作」を自動運転システムが担います。
ただし、「無人タクシー」という言葉自体が特定の自動運転レベルを意味するわけではありません。また、自動運転車であっても必ず無人で走行できるわけではないため、自動運転と無人運転は区別して考える必要があります。
無人タクシーと自動運転レベル4の関係
自動運転のレベルは、一般的にレベル0からレベル5までに分類されます。
レベル0では運転者がすべての運転操作を担当し、レベル1やレベル2ではシステムが運転の一部を支援します。
レベル3では一定の条件下でシステムが運転操作を行いますが、システムから運転操作を引き継ぐよう求められた場合などには、運転者による対応が必要になります。
一方、レベル4では、あらかじめ設定された走行環境条件の範囲内において、システムがすべての動的運転タスクを担当します。
そのため、運転席にドライバーを配置しない本格的な無人タクシーを実現するうえで、レベル4は重要な技術となります。
レベル5は、限定された走行環境条件を前提とせず、自動運転システムが運転を行う段階です。
レベル4ならどこでも無人で走れるわけではない
レベル4について特に重要なのが、「決められた条件の範囲内で自動運転できる」という点です。
自動運転システムには、走行できる道路、地域、速度、時間帯、天候などの条件が設定される場合があります。このような自動運転システムが正常に作動できる条件は、ODD(Operational Design Domain:運行設計領域)と呼ばれます。
そのため、レベル4だからといって、日本中のあらゆる道路を無人で自由に走行できるわけではありません。
例えば、特定の地域内だけを走行する無人タクシーや、決められたルートを運行する自動運転バスなどが考えられます。
無人タクシーはどうやって走る?
無人タクシーでは、複数のセンサーやコンピューターを組み合わせて周囲の状況を把握します。
代表的なものとして、カメラ、レーダー、LiDAR(ライダー)、衛星測位システム、高精度地図などがあります。
カメラは信号機や道路標識、車線、歩行者などを認識するために利用できます。レーダーは電波を利用して周囲の物体との距離や相対速度などを把握します。
LiDARはレーザー光を利用して周囲の物体までの距離を測定し、車両周辺の形状を把握するために利用されます。
さらに、衛星測位や高精度地図などを利用して自車位置を把握します。
自動運転システムは、こうした情報を統合しながら周囲の状況を認識し、進路や速度などを判断して、ステアリング、アクセル、ブレーキなどを制御します。
無人タクシーと運転支援機能は違う
現在販売されている自動車には、車線維持支援や追従走行、衝突被害軽減ブレーキなど、さまざまな運転支援機能があります。
しかし、高度な運転支援機能を搭載しているからといって、その自動車が無人で走行できるとは限りません。
特にレベル2では、システムがアクセル・ブレーキやハンドル操作を支援していても、運転の主体は人間です。運転者には周囲を監視し、必要に応じて適切に操作する責任があります。
無人タクシーを理解する際には、「運転を支援するシステム」と「一定条件下で運転そのものをシステムが担う自動運転」を区別することが重要です。
日本ではレベル4の無人運転が制度上可能
日本では道路交通法の改正により、SAEレベル4に相当する、運転者がいない状態での自動運転を対象とした「特定自動運行」の許可制度が創設されました。
自動運転に関係する改正規定は2023年4月に施行されています。
特定自動運行を行う場合には、都道府県公安委員会の許可を受ける必要があり、一定の要件や運行体制などが求められます。
つまり、日本でも法律上、一定の条件を満たしたレベル4の車両を運転者なしで走行させるための制度が整備されています。
「無人移動サービス」と「無人タクシー」は同じではない
日本の自動運転に関するニュースを見ると、「レベル4の無人運転サービスが実現した」といった表現を目にすることがあります。
ここで注意したいのが、無人の自動運転移動サービスが実現したからといって、一般的なタクシーと同じサービスが全国で利用できるようになったわけではないことです。
自動運転移動サービスには、決められたルートを走行する車両なども含まれます。
一方、一般的なタクシーは利用者の需要に応じて乗車地点や目的地が変わります。そのため、自動運転タクシーには、多様な道路や交通状況への対応など、より複雑な技術や運用が求められる場合があります。
日本の無人タクシーはどこまで進んでいる?
日本では、地域公共交通を中心としてレベル4自動運転の社会実装が進められています。
また、国は自動運転タクシーの社会実装を見据え、車両の安全性だけでなく、運行管理、事故原因の究明、事故が発生した場合の補償などを含めた制度整備を進めています。
国土交通省が2026年に公表した資料では、2027年度に自動運転タクシーや自動運転トラックなどの社会実装が示されています。
さらに政府は、2027年度までに無人自動運転移動サービスを100か所以上で実現する方針を掲げています。
したがって、日本の無人タクシーは単なる研究段階ではなく、実証から具体的な事業化・社会実装へ移行している段階といえます。
無人タクシーが期待される理由
無人タクシーの普及が期待される大きな理由の一つが、交通分野における人手不足への対応です。
タクシーやバスなどの公共交通では、運転者不足がサービスを維持するうえで課題となっています。自動運転によって運転業務の一部または全部をシステムが担えるようになれば、こうした問題への対応策になる可能性があります。
また、高齢化や人口減少が進む地域では、公共交通の維持が難しくなるケースがあります。自動運転による移動サービスが実用化されれば、地域住民の「移動の足」を確保する手段の一つになる可能性があります。
交通事故の削減も期待される効果です。人間の認知や判断のミスなどに起因する事故を自動運転技術によって減らせる可能性があります。
無人タクシーの課題
無人タクシーを広く普及させるためには、技術面だけでなく制度や運用面にも多くの課題があります。
自動運転車は、歩行者や自転車、工事、緊急車両、複雑な交差点など、実際の道路で発生するさまざまな状況に安全に対応する必要があります。
悪天候やセンサーの性能に影響する環境への対応も重要です。
さらに、事故が発生した場合の原因究明、責任や補償のあり方、サイバーセキュリティ、車両の保守管理、遠隔監視を含む運行管理などについても適切な仕組みが必要です。
無人タクシーは「ドライバーを車から降ろせば完成」という単純なものではなく、車両、通信、運行管理、法制度などを含めた交通システム全体として安全性を確保する必要があります。
無人タクシーが普及するとタクシーはどう変わる?
無人タクシーが普及すると、タクシー業界における人の役割も変化する可能性があります。
車両を直接運転する仕事だけでなく、複数の自動運転車両を管理したり、トラブル発生時に対応したりする業務の重要性が高まることが考えられます。
また、自動運転タクシーと従来の有人タクシーが、地域や利用目的によって使い分けられる可能性もあります。
すべてのタクシーが短期間で無人化されると考えるのではなく、まず自動運転に適した地域や条件から導入され、利用範囲が徐々に広がっていくと考えるのが適切です。
まとめ
無人タクシーとは、人間のドライバーに代わって自動運転システムが車両を制御し、乗客を運ぶタクシーサービスです。
本格的な無人運行を実現するうえでは、一定の走行環境条件の中でシステムが運転を担う「自動運転レベル4」が重要になります。
日本では2023年4月からレベル4に相当する「特定自動運行」の制度が施行され、運転者を配置しない自動運転を行うための法制度が整備されています。
一方、レベル4はどこでも自由に無人走行できる技術を意味するものではありません。定められた走行環境条件の範囲内で運行することが前提です。
日本では自動運転移動サービスの社会実装が進められており、自動運転タクシーについても事業化に向けた制度・技術の整備が進んでいます。
ドライバー不足や地域交通、交通安全などの課題を解決する可能性を持つ無人タクシーは、今後の交通システムを大きく変える技術・サービスの一つとして注目されています。

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