マグロ完全養殖とは?仕組みや由来、養殖との違いをわかりやすく解説

マグロ完全養殖 ナレッジ

回転寿司のメニューやニュースの特集で、「マグロ完全養殖」という言葉を目にしたことがある人は多いのではないでしょうか。

天然マグロとは違うらしいけれど、普通の「養殖マグロ」と何が違うのか、具体的に説明できる人は意外と少ないものです。

一言でいえば、マグロ完全養殖とは、卵から育てたマグロを成魚にし、その成魚からまた卵を産ませて育てる、天然の稚魚に頼らない養殖の方法です。

この記事では、マグロ完全養殖の意味や仕組み、一般的な養殖との違いについてわかりやすく解説します。

マグロ完全養殖とは

マグロ完全養殖とは、マグロの卵をふ化させて育て、成魚になった個体からさらに卵を採って次の世代を育てる養殖方法です。

天然の海で生まれた稚魚や成魚を一切使わず、人の管理のもとで卵から成魚、そして産卵までの一生を完結させる点が最大の特徴です。

このため、天然資源を獲ってくる量を増やさなくても、理論上は養殖そのものでマグロを増やし続けられる仕組みになっています。

マグロ完全養殖の仕組み

マグロ完全養殖は、大きく分けて次のような段階を経て進められます。

  • 親魚となるマグロを生け簀で飼育し、自然に近い環境で産卵させる
  • 産まれた卵を採取し、専用の水槽でふ化させる
  • ふ化したばかりの稚魚を、エサや水温を管理しながら育てる
  • 稚魚が成長して幼魚、さらに成魚になるまで生け簀で飼育を続ける
  • 成魚になった個体の一部を親魚として残し、再び産卵させる

この一連の流れを何世代も繰り返すことで、天然の個体に頼らない養殖サイクルが成り立ちます。

マグロ完全養殖の由来

マグロ完全養殖という言葉が広く知られるようになったきっかけは、近畿大学水産研究所によるクロマグロ(本マグロ)の研究です。

同研究所は長年にわたる研究を重ね、2002年にクロマグロの完全養殖に世界で初めて成功したと発表したとされています。

卵から育てた個体が成魚となり、そこから再び卵を得るまでに、研究開始から30年以上を要したとも言われており、地道な試行錯誤の積み重ねがあったことがうかがえます。

この成果をもとに市場に出荷されるようになったマグロは「近大マグロ」という呼び名で知られるようになり、マグロ完全養殖という言葉自体の認知度を高める役割も果たしました。

マグロ完全養殖と養殖の違い

一般に「養殖マグロ」と呼ばれるもののなかには、天然の稚魚を捕まえてきて育てる方法も含まれています。

こうした、天然の幼魚(クロマグロの幼魚は「ヨコワ」と呼ばれます)を捕獲して生け簀で大きく育てる方法は、「蓄養」と呼ばれ、マグロ完全養殖とは区別されます。

蓄養は成長を早めて出荷サイズにするための飼育であり、卵から育てているわけではないため、天然資源を利用している点は天然漁業と変わりません。

項目マグロ完全養殖養殖(蓄養を含む一般的な養殖)
出発点人工的にふ化させた卵天然で生まれた稚魚や幼魚
天然資源への依存低い(世代を重ねれば依存しない)高い(捕獲した天然個体に依存)
主な目的資源に頼らない安定供給や繁殖技術の確立出荷サイズまでの成長促進

つまりマグロ完全養殖は、数ある養殖方法のなかでも、天然資源への依存度を特に低くできる点に特徴があります。

マグロ完全養殖が注目される理由

マグロ完全養殖が社会的な関心を集める背景には、いくつかの理由があります。

  • クロマグロなどの天然資源が減少し、漁獲量の規制が強まっていること
  • 国際的な漁獲枠の変動に左右されにくい、安定した供給源になり得ること
  • 育成環境を管理できるため、エサや水質などの品質管理がしやすいこと
  • 優れた成長特性を持つ個体を選んで繁殖させる、品種改良の余地があること

特にクロマグロは国際的な漁獲規制の対象となっており、天然資源だけに頼らない供給方法として完全養殖への期待が高まっています。

マグロ完全養殖の課題

マグロ完全養殖には多くの利点がある一方で、技術的・コスト的な課題も残されています。

マグロは神経質な性質を持つ魚で、生け簀の壁にぶつかったり、物音に驚いて衝突したりして死んでしまうことが少なくありません。

特にふ化したばかりの稚魚は非常に弱く、成魚まで育てられる個体の割合は決して高くないとされています。

また、マグロは大量のエサを必要とする魚であり、飼育にかかる人件費や設備投資とあわせて、コスト面の負担が大きいことも課題です。

こうした課題を解決するため、現在も生け簀の素材や形状、エサの改良などさまざまな研究が続けられています。

マグロ完全養殖マグロはどこで食べられる?

マグロ完全養殖によって育てられたマグロは、現在ではスーパーの鮮魚コーナーや回転寿司チェーンなど、身近な場所でも見かけるようになっています。

天然資源に頼らない安定した出荷が可能になったことで、以前よりも手に取りやすい価格帯で提供されるケースも増えてきました。

外食産業や小売業が、資源保護や持続可能な調達を意識した取り組みとして、完全養殖マグロの取り扱いを紹介する例も見られます。

マグロ完全養殖についてよくある誤解

マグロ完全養殖については、言葉の響きから誤解されやすい点もいくつかあります。

  • 「養殖マグロ」と表示されていれば、すべて完全養殖だと思われがちですが、実際には天然の稚魚を育てる蓄養も多く含まれます
  • 完全養殖であれば必ず天然マグロより安価だと思われがちですが、育成コストの高さから価格が大きく変わらない場合もあります
  • 完全養殖は味や品質が天然マグロに劣ると思われがちですが、育成環境の管理によって品質が安定しているという側面もあります

こうした違いを知っておくと、店頭やメニューで「養殖」「完全養殖」と表示されているマグロの意味を、より正確に理解できます。

まとめ

マグロ完全養殖とは、卵から成魚まで育て、その成魚からまた卵を採って繁殖させる、天然資源に依存しない養殖の方法です。

天然の稚魚を捕まえて育てる蓄養や一般的な養殖とは異なり、理論上は天然資源を追加で獲らなくても世代を重ねていける点に大きな特徴があります。

近畿大学水産研究所による研究成果として知られるようになったこの技術は、資源保護や安定供給の観点から今も注目を集めていますが、生存率の低さやコストの高さといった課題も残っています。

店頭やメニューで「完全養殖」という表示を見かけたときは、それが天然資源に頼らない閉じたサイクルで育てられたマグロであることを、思い出してみてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました