テニス、卓球、バレーボール、バドミントンなど、多くのスポーツでは「サーブ」または「サービス」によってプレーが始まります。
同じサーブでも、使用するボールや用具、コートの大きさ、打ち方は競技によって大きく異なります。当然、サーブの速度にも大きな違いがあります。
では、サーブが速いスポーツは何なのでしょうか。
この記事では、サーブを行う代表的なスポーツを取り上げ、公式記録だけでなく、研究や計測例などの参考データも含めてサーブ速度を比較します。
スポーツ別のサーブ速度比較表
まずは、それぞれの競技で確認できるサーブ速度を比較してみましょう。
| 競技 | サーブ速度の参考値 | データの種類・注意点 |
|---|---|---|
| テニス | 263 km/h | 男子のギネス世界記録 |
| スカッシュ | 約281 km/h | 最速サーブとして紹介される参考記録 |
| ピックルボール | 約113 km/h | 男子の合法サーブのギネス世界記録 |
| バレーボール | 約88 km/h | 男子プロ選手のジャンプトップスピンサーブを対象とした研究の平均値 |
| ビーチバレーボール | 約73 km/h | 国際大会出場選手を対象とした研究の平均値 |
| セパタクロー | 約60 km/h | 実際のサーブ速度として研究で使用された平均的な値 |
| 卓球 | 約50〜60 km/h程度 | 高速サーブの参考値。統一された公式最高記録ではない |
| バドミントン | 数十〜100 km/h程度 | サーブ方法による差が大きく、統一された最高記録はない |
| パデル | 100 km/h前後までが一つの目安 | 公式最高記録ではなく参考値。アンダーハンド形式 |
この表で重要なのは、すべての数字が同じ条件で計測されたものではないという点です。
「世界最高記録」「研究で計測された平均速度」「個別の計測例」「一般的な参考値」が混在しています。そのため、厳密な世界ランキングではなく、各競技のサーブがどの程度の速度になるのかを把握するための比較表として見るのが適切です。
テニスのサーブ速度
テニスは高速サーブで知られる代表的なスポーツです。
男子プロ選手ではファーストサーブが200km/hを超えることも珍しくなく、サーブを得意とする選手になると220km/hを超えることもあります。
男子のギネス世界記録として登録されているのが、オーストラリアのサム・グロスが2012年に記録した263km/hです。
これは韓国・釜山で行われたATPチャレンジャー大会で記録されたものです。
一方、最高記録ではなく一般的なプロレベルを見ると、男子プロのファーストサーブは180km/h前後に達することがあります。
テニスは、サーブ速度を比較するスポーツの中でも特にデータが豊富な競技です。
スカッシュのサーブ速度
スカッシュは四方を壁に囲まれたコートで行われるラケットスポーツです。
サービスでは、サービスボックスからフロントウォールへボールを打ちます。
スカッシュについては、最速サーブとして約281km/hという数字が紹介されることがあります。
ただし、テニスのギネス世界記録のように統一された条件で広く公式管理されている記録とは性質が異なるため、参考記録として考える必要があります。
また、スカッシュでは単純に速いボールを打つだけでなく、壁を利用して相手が返球しにくい場所へボールを送ることが重要です。
ピックルボールのサーブ速度
ピックルボールは、穴の開いたプラスチック製ボールをパドルで打つラケットスポーツです。
ギネス世界記録には、ゼイン・ナブラティルが2024年に記録した最速の合法的な男子ピックルボールサーブが登録されています。
その速度は70mphで、約112.65km/hです。
穴の開いた軽量なボールを使用するため空気抵抗が大きく、打った後に速度が落ちやすいという特徴があります。
バレーボールのサーブ速度
バレーボールには、フローターサーブ、ジャンプフローターサーブ、ジャンプトップスピンサーブなどがあります。
特に高速になるのが、助走とジャンプを利用して強く打つジャンプ系のサーブです。
プロの男子バレーボール選手65人、合計1,270本のジャンプトップスピンサーブを分析した研究では、平均速度が88.2km/hでした。
また、別の研究では若い競技選手のジャンプサーブで最高105.9km/hが計測されています。
トップレベルでは100km/hを超えるサーブが十分に可能であることが分かります。
一方、フローターサーブでは最高速度だけを追求するわけではありません。ボールの回転を抑えることで軌道を変化させ、レシーバーを崩すことが重要になります。
ビーチバレーボールのサーブ速度
ビーチバレーボールでも、インドアのバレーボールと同様にサーブからラリーが始まります。
研究では、国際大会に参加する選手のサーブについて平均72.98km/hという値が報告されています。
国内・地域大会に参加する選手では平均70.97km/hで、研究対象全体では良好なサーブの平均が約72.12km/hでした。
ビーチバレーボールの場合、砂の上で助走やジャンプを行ううえ、風などの屋外環境もボールの軌道に影響します。
そのため、単純な速度以外にもコースや変化が重要です。
セパタクローのサーブ速度
セパタクローは、手や腕を使わず、主に足や頭などでボールを扱うネットスポーツです。
サーバーである「テコン」は、味方から投げられたボールを足で蹴って相手コートへ送ります。
セパタクロー用のボールランチャーを開発した研究では、実戦におけるサーブの平均的なボール速度として約60km/hという値が使用されています。
ラケットや手ではなく、足でボールを蹴るという点がほかのサーブ競技との大きな違いです。
卓球のサーブ速度
卓球では、サーブ速度について統一された公式世界記録はありません。
一般に紹介される高速サーブの計測例としては50〜60km/h程度の数字がありますが、測定条件や情報源が統一されているわけではないため、あくまで参考値として考える必要があります。
卓球ではラリー中のボールはさらに高速になります。研究文献では、打球後のボールが100km/h程度に達する可能性があることも報告されています。
しかし、サーブでは単純な速度よりも回転が非常に重要です。
下回転、横回転、上回転などを使い分け、さらにコースやバウンド位置を変えることで相手のレシーブを崩します。
そのため、卓球のサーブを「何km/h出るか」だけで評価することはできません。
バドミントンのサーブ速度
バドミントンは非常に高速なシャトルで知られる競技ですが、注意しなければならないのが「スマッシュ速度」と「サーブ速度」の違いです。
バドミントンで知られる400km/hを超えるような速度は高速スマッシュなどで記録されたものであり、サーブの速度ではありません。
サービスでは、ショートサービス、ロングサービス、フリックサービスなどを状況に応じて使い分けます。
特にダブルスでは、ネットぎりぎりを通すショートサービスが重要であり、最高速度を狙う必要がありません。
サーブの速度は種類によって大きく異なりますが、参考値としては数十km/hから、速いフリック系では100km/h程度に達する可能性があります。
ただし、統一された公式最高サーブ速度ではないため、あくまで速度感を把握するための目安です。
さらに、シャトルは非常に大きな空気抵抗を受けるため、打った直後から急激に減速します。
パデルのサーブ速度
パデルはテニスに似たラケットスポーツですが、サービス方法が大きく異なります。
ボールを一度バウンドさせ、規定された低い位置からアンダーハンドで打つため、テニスのような200km/hを超えるオーバーヘッドサーブにはなりません。
パデルではサーブ速度に関する統一された公式世界記録はなく、具体的な数字は計測条件によって変わります。
参考値としては100km/h前後までを一つの目安として考えることができます。
パデルではサーブそのものだけでポイントを決めるよりも、適切なコースへサービスを入れてネットへ進み、その後の展開を有利にすることが重要です。
サーブ速度を単純にランキングできない理由
比較表を見ると、「スカッシュはテニスより速いのか」「卓球は意外に遅い」といった印象を受けるかもしれません。
しかし、競技間の数字をそのまま順位付けすることには注意が必要です。
第一に、計測方法が統一されていません。
テニスのように大会で速度計測が広く行われる競技がある一方、卓球やパデルなどではサーブ速度そのものが主要な統計として扱われていません。
第二に、最高速度と平均速度はまったく異なります。
263km/hというテニスの数字は最高記録ですが、88.2km/hというバレーボールの数字は研究対象となったサーブの平均です。
第三に、使用するボールやシャトルが異なります。
テニスボール、卓球ボール、バレーボール、シャトル、ピックルボールでは、質量や大きさ、形状、空気抵抗が大きく異なります。
したがって、表の数字は「各競技のサーブがどのくらいの速度になるのか」を知るための目安として利用するのが適切です。
サーブは速ければ速いほど良いわけではない
サーブの面白いところは、最高速度だけでは強さが決まらないことです。
テニスならスライスやキックなどの回転、卓球なら回転量や回転方向、バレーボールならフローター特有の軌道変化があります。
バドミントンのダブルスでは、速いサービスよりもネットぎりぎりを通過する短いサービスが有効になる場面が多くあります。
コースも重要です。
相手から遠い場所だけでなく、あえて身体の正面を狙うことで返球を難しくできる競技もあります。
さらに、速度を上げるほどミスのリスクが高くなる場合もあります。
サーブは「速度」「回転・変化」「コース」「安定性」を組み合わせて相手を崩す技術なのです。
サーブの速さと体感速度は同じではない
もう一つ重要なのが、実際の速度と選手が感じる「速さ」は必ずしも一致しないことです。
例えば卓球のサーブはテニスより球速が低くても、卓球台が小さく、相手との距離も非常に短いため、レシーバーが判断できる時間は短くなります。
反対に、バドミントンのシャトルは打った瞬間の初速が非常に高くても、大きな空気抵抗によって急速に減速します。
さらに、回転、軌道、バウンド、壁の利用なども競技によって異なります。
そのため、「時速100kmだから時速50kmの競技より2倍対応が難しい」と単純に考えることはできません。
まとめ
サーブやサービスを行うスポーツには、テニス、スカッシュ、ピックルボール、バレーボール、ビーチバレーボール、セパタクロー、卓球、バドミントン、パデルなどがあります。
公式記録が確認できるものでは、テニスで263km/h、ピックルボールで約113km/hという高速サーブが記録されています。
研究データでは、男子プロバレーボールのジャンプトップスピンサーブで平均88.2km/h、国際レベルのビーチバレーボール選手で平均約73km/hといった数値があります。
一方、卓球、バドミントン、パデル、スカッシュなどは、サーブの公式最高速度として統一的に比較できるデータが限られています。そのため、これらについては研究、個別の計測例、競技関連資料などから得られる数字を参考値として見る必要があります。
そして、どの競技でもサーブの強さを決めるのは速度だけではありません。
回転、変化、コース、距離、相手の反応時間、サーブ後の展開まで含めて考えることで、それぞれの競技におけるサーブの特徴がより明確になります。


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