上場廃止とは、証券取引所に上場している株式などが、取引所で売買できなくなることです。
企業の経営破綻によって上場廃止になるケースもあれば、買収や経営戦略の一環として企業が自主的に非上場化するケースもあります。
そのため、上場廃止になったからといって、必ずしも企業が倒産するわけではありません。
また、株式を保有している投資家にとっては、上場廃止の理由や手続きによって、株式の価値や売却方法が大きく変わります。
この記事では、上場廃止の意味や主な理由、株価への影響、保有株の取り扱い、監理銘柄と整理銘柄の違いについてわかりやすく解説します。
上場廃止とは?
上場廃止とは、証券取引所に上場している株式などについて、取引所での売買を終了させることです。
例えば、東京証券取引所に上場している企業が上場廃止になると、その企業の株式は東京証券取引所で売買できなくなります。
ただし、上場廃止と会社の消滅は同じ意味ではありません。
企業が非上場会社として事業を継続する場合もあれば、合併によって会社そのものが消滅する場合もあります。
また、上場廃止後も株式が存続するケースと、株式が現金などに換えられるケースがあります。
上場と上場廃止の違い
| 項目 | 上場 | 上場廃止 |
|---|---|---|
| 意味 | 株式などを証券取引所で売買できる状態にすること | 証券取引所での売買を終了すること |
| 株式の売買 | 取引所で売買できる | 当該取引所では売買できなくなる |
| 資金調達 | 株式市場を通じた資金調達が可能 | 上場株式の発行による資金調達はできなくなる |
| 情報開示 | 取引所の上場規則に基づく開示義務がある | 上場規則に基づく開示義務はなくなるが、別の法令に基づく義務が残る場合がある |
上場廃止は、企業と株式市場との関係が変わる重要な出来事です。
上場廃止になる主な理由
上場廃止になる理由は、大きく分けて企業が自主的に非上場化するケースと、上場廃止基準に該当するケースがあります。
1. MBOによる非上場化
MBOとは、Management Buyoutの略称で、経営陣が自社の株式や事業を取得する買収手法です。
経営陣が投資ファンドなどと協力して株式を取得し、企業を非上場化する場合があります。
非上場化することで、株式市場からの短期的な評価に左右されにくい経営体制を構築し、中長期的な経営改革を進めることなどが目的となります。
ただし、MBOを実施した企業が必ず上場廃止になるわけではありません。
2. TOBによる買収
TOBとは、Takeover Bidの略称で、日本語では「株式公開買付け」と呼ばれます。
買付価格や買付期間などの条件を公表し、証券取引所の市場外で株式を買い付ける制度です。
他社がTOBによって対象企業の株式を取得し、完全子会社化する場合などに上場廃止となることがあります。
TOBの実施だけで上場廃止が確定するわけではなく、買収の目的や取得後の株式保有状況、追加の手続きなどによって決まります。
3. 上場維持基準への不適合
証券取引所には、上場企業が継続して満たす必要のある上場維持基準があります。
東京証券取引所では、市場区分に応じて株主数、流通株式数、流通株式時価総額、流通株式比率などの基準が設けられています。
これらの基準を満たさなくなり、所定の改善期間などを経ても適合できない場合、上場廃止となることがあります。
ただし、基準を一時的に満たさなくなっただけで、直ちに上場廃止になるとは限りません。
4. 経営破綻
企業が経営破綻し、破産手続開始の決定を受けるなど、証券取引所の上場廃止基準に該当した場合には、上場廃止となることがあります。
経営破綻による上場廃止では、株式の価値が大幅に低下したり、最終的に無価値になったりする可能性があります。
株主は会社の残余財産について分配を受ける権利を持っていますが、清算時には債権者への弁済が優先されます。
そのため、株主に財産が分配されないケースもあります。
5. 合併や株式交換などの企業再編
企業同士の合併や株式交換などによって、上場企業が消滅したり、他社の完全子会社になったりする場合にも上場廃止が発生します。
例えば、上場企業が別の企業に吸収合併される場合、吸収される企業の株式は上場廃止となります。
この場合、株主が受け取る対価は、合併契約などの条件によって異なります。
上場廃止になると株価はどうなる?
上場廃止が発表された場合、株価が上昇するケースもあれば、大幅に下落するケースもあります。
株価の動きは、上場廃止の理由や企業の財務状況、買収条件などによって異なります。
TOBによる上場廃止の場合
TOBでは、市場価格より高い買付価格が提示されることがあります。
例えば、株価が1,000円の企業に対して、1株1,500円でTOBが発表された場合、株価が買付価格に近づく可能性があります。
ただし、TOBの成立が不確実な場合や、買付条件に制限がある場合などには、株価が買付価格と一致するとは限りません。
また、TOBが不成立となった場合には、株価が大きく変動する可能性もあります。
経営破綻による上場廃止の場合
経営破綻が原因の場合、株式の価値が失われる可能性があるため、株価が大幅に下落することがあります。
企業の財務状況や再建の可能性などによって市場の評価は異なりますが、最終的に株式が無価値になる場合もあります。
上場維持基準への不適合の場合
上場維持基準への不適合による上場廃止では、株価の方向を一概に判断することはできません。
上場廃止によって株式の流動性が低下することへの懸念が生じる一方、企業の事業価値や財務状況が直ちに変化するとは限らないためです。
投資家は、上場廃止の理由だけでなく、企業の経営状況や今後の方針も確認する必要があります。
上場廃止になった株はどうなる?
上場廃止が決まったとき、株式を保有している投資家にとって重要なのは、その株式が最終的にどう扱われるかという点です。
上場廃止になったからといって、すべての株式が自動的に消滅するわけではありません。
主なケースを整理すると、次のようになります。
| ケース | 保有株の取り扱い |
|---|---|
| TOB | 応募して買付けが成立すると、条件に従って株式を売却できる |
| 完全子会社化 | 株式併合などにより、現金を受け取る場合がある |
| 株式交換 | 契約条件に応じて親会社の株式などを受け取る場合がある |
| 非上場会社として存続 | 株式を保有し続ける場合がある |
| 破産・清算 | 株式の価値がなくなる可能性がある |
上場廃止後も株式を保有できる場合
企業が非上場会社として存続し、株式も引き続き存在する場合には、株主としての権利が残ることがあります。
ただし、証券取引所で売買できなくなるため、株式の売却が難しくなる可能性があります。
非上場株式は、上場株式のように市場価格が継続的に形成されるとは限りません。
また、株式の譲渡に会社の承認が必要となる場合もあります。
現金を受け取る場合
TOB後の完全子会社化などでは、株式併合などの手続きによって、少数株主が保有する株式が現金化される場合があります。
ただし、現金を受け取るまでの期間や金額、必要な手続きは案件ごとに異なります。
企業が公表する資料や証券会社の案内を確認することが重要です。
上場廃止までの流れ
上場廃止の可能性が生じてから、実際に取引が終了するまでの流れは、上場廃止の理由によって異なります。
証券取引所による審査や判断を伴う場合には、監理銘柄や整理銘柄に指定されることがあります。
一般的な流れの一例は、次のとおりです。
- 上場廃止の可能性が発生する
- 必要に応じて監理銘柄に指定される
- 証券取引所が上場廃止を決定する
- 必要に応じて整理銘柄に指定される
- 最終売買日を迎える
- 上場廃止となる
ただし、すべての企業がこの順番をたどるわけではありません。
TOBによる完全子会社化などでは、買収手続きの進行に応じて上場廃止日が決まる場合があります。
また、上場廃止日と最終売買日は通常異なります。
株式を売却する予定がある場合には、実際にいつまで取引できるのかを確認する必要があります。
監理銘柄と整理銘柄の違い
上場廃止に関連して、ニュースなどでよく登場するのが「監理銘柄」と「整理銘柄」です。
両者は似た言葉ですが、上場廃止が決定しているかどうかという重要な違いがあります。
| 項目 | 監理銘柄 | 整理銘柄 |
|---|---|---|
| 状態 | 上場廃止の可能性がある | 上場廃止が決定している |
| 目的 | 投資家に注意を促す | 上場廃止の決定を投資家に周知する |
| 上場廃止 | 未確定 | 決定済み |
| 売買 | 原則として可能 | 原則として上場廃止まで可能 |
監理銘柄とは?
監理銘柄とは、上場廃止の可能性がある場合などに、証券取引所が投資家に注意を促すために指定する銘柄です。
監理銘柄に指定された時点では、上場廃止が確定しているわけではありません。
その後の審査や状況の変化によって、指定が解除される場合もあります。
整理銘柄とは?
整理銘柄とは、上場廃止が決定した銘柄について、投資家にその事実を周知するために指定されるものです。
整理銘柄に指定された後も、売買停止などの措置がなければ、上場廃止まで取引できる場合があります。
ただし、整理銘柄への指定期間や最終売買日は、個別の案件によって異なります。
上場廃止のメリットとデメリット
企業が自主的に非上場化する場合には、経営上のメリットとデメリットがあります。
上場廃止のメリット
1. 中長期的な経営戦略を進めやすくなる
非上場化によって株主構成を集約することで、短期的な株価変動や市場評価に左右されにくい経営体制を構築できる場合があります。
2. 上場維持コストを削減できる
上場企業には、証券取引所の規則に基づく情報開示や上場維持に関する費用が発生します。
非上場化によって、これらの費用や事務負担の一部を削減できる可能性があります。
ただし、非上場化後も法令に基づく情報開示などの義務が残る場合があります。
3. 意思決定を迅速化できる場合がある
経営陣や特定の株主に株式を集約することで、経営方針の決定や組織再編を進めやすくなる場合があります。
上場廃止のデメリット
1. 株式市場を通じた資金調達が難しくなる
非上場化すると、上場株式を発行して市場から資金を調達する方法は利用できなくなります。
そのため、金融機関からの借入れや非上場株式の発行など、別の資金調達手段を検討する必要があります。
2. 株式の流動性が低下する
非上場株式は、証券取引所で自由に売買することができません。
株主にとっては、売却先を見つけにくくなる可能性があります。
3. 知名度や信用への影響が生じる可能性がある
上場企業であることは、企業の知名度や取引先からの評価に影響する場合があります。
非上場化によって、こうした評価が変化する可能性があります。
ただし、上場廃止による影響は企業の事業内容や財務状況などによって異なります。
上場廃止が発表されたら確認すべきこと
保有している株式の上場廃止が発表された場合、投資家は次の情報を確認することが重要です。
- 上場廃止の理由
- 上場廃止予定日
- 最終売買日
- TOBの有無
- TOBの買付価格と応募期間
- 上場廃止後の株式の取り扱い
- 現金交付や株式交換などの条件
特にTOBが実施される場合には、応募方法や応募先の証券会社、買付予定数の上限・下限などを確認する必要があります。
また、TOBに応募しなかった場合の取り扱いについても、企業が公表する資料を確認することが重要です。
上場廃止が決定したという事実だけで判断するのではなく、企業の適時開示資料や証券会社の案内を確認しましょう。
上場廃止に関するよくある質問
Q. 上場廃止になると会社は倒産する?
必ずしも倒産するわけではありません。
MBOやTOBによって非上場化した企業が、その後も事業を継続するケースがあります。
一方、経営破綻が原因で上場廃止になる場合もあります。
上場廃止と倒産は、異なる概念です。
Q. 上場廃止になると株は紙くずになる?
必ずしも株式の価値がなくなるわけではありません。
買収による非上場化では、株主が現金や別の会社の株式などを受け取る場合があります。
一方、破産などによって企業の残余財産が株主に分配されない場合には、株式の価値がなくなる可能性があります。
Q. 上場廃止が決まった株は売却できる?
上場廃止前であれば、売買停止などの措置がない限り、証券取引所で売却できる場合があります。
ただし、売却注文を出しても、買い手がいなければ取引は成立しません。
上場廃止後は、当該証券取引所で売買できなくなります。
Q. 上場廃止した企業が再上場することはある?
あります。
一度上場廃止になった企業でも、再び証券取引所の上場審査を受け、上場基準を満たせば再上場することがあります。
ただし、再上場が保証されているわけではありません。
Q. TOBが発表されたら必ず上場廃止になる?
必ずしも上場廃止になるわけではありません。
TOBは株式を取得するための手続きであり、上場廃止そのものを意味する制度ではありません。
買付けの目的や結果、その後の手続きによって、上場が維持される場合もあります。
まとめ
上場廃止とは、証券取引所に上場している株式などが、取引所で売買できなくなることです。
上場廃止の主な理由には、MBO、TOBによる買収、上場維持基準への不適合、経営破綻、合併などの企業再編があります。
重要なのは、上場廃止と倒産は同じ意味ではないという点です。
企業が非上場会社として事業を継続する場合もあれば、経営破綻によって株式の価値が失われる場合もあります。
また、保有株式の取り扱いは、上場廃止の理由や買収・再編の条件によって異なります。
投資家は、上場廃止というニュースだけで判断するのではなく、その理由や最終売買日、株式の取り扱いなどを正確に確認することが重要です。


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