褥瘡という言葉は、病院の看護記録や介護施設での申し送り、あるいはニュースで介護問題が取り上げられる場面などで耳にすることがあります。
普段あまり聞かない漢字が使われているため、読み方や意味がすぐにはわからない人も多いのではないでしょうか。「床ずれ」とはどう違うのか、単なる皮膚炎とは何が違うのかも気になるところです。
一言でいえば、褥瘡とは同じ体勢が長く続くことで皮膚や皮下の組織が傷んでしまう状態のことです。
この記事では、褥瘡の意味や原因、できる仕組み、床ずれ・皮膚炎との違いについてわかりやすく解説します。
褥瘡とは
褥瘡とは、同じ体勢が長く続くことで体の一部が圧迫され、血の巡りが悪くなって皮膚や皮下の組織が傷んでしまう状態のことです。
一般には「床ずれ」という呼び方のほうが広く知られていますが、医療や介護の現場では「褥瘡」という言葉が正式な用語として使われています。
寝たきりの状態が続く人や、自分で体の向きを変えることが難しい人に起こりやすいとされています。
見た目は軽い赤みから始まることが多いものの、放置すると皮膚の内部まで傷が進んでしまうことがある点に注意が必要です。
⚠️ 健康・医療に関する大切なお知らせ
このページは一般的な情報をわかりやすくまとめたものです。症状や治療など健康に関する判断は自己判断せず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。
参考: 厚生労働省 / e-ヘルスネット(厚労省) / MSDマニュアル家庭版 / 難病情報センター
褥瘡の読み方と言葉の由来
褥瘡は「じょくそう」と読みます。
「褥」は寝床や敷物を意味する漢字で、「瘡」は皮膚のできものや傷を意味する漢字です。
二つの漢字を合わせることで、寝床に長くいることによって生じる皮膚の傷という意味を表す言葉になっています。
日常会話で使われることは少なく、医療や介護の専門用語として定着している言葉です。
褥瘡ができる仕組み
人の体は、同じ場所に体重がかかり続けると、その部分の血管が圧迫されて血流が悪くなります。
血流が滞ると、皮膚や皮下の組織に酸素や栄養が届きにくくなり、細胞が傷んでいきます。
健康な人であれば、無意識のうちに体の向きを変えたり寝返りをしたりすることで、一か所に圧力がかかり続けることを避けています。
しかし寝たきりの状態や、体を動かす力が弱くなっている状態では、この自然な動きが難しくなり、褥瘡ができやすくなります。
褥瘡ができる主な原因
圧迫と血流の低下
骨が突き出ている部分など、体重がかかりやすい場所は特に圧迫を受けやすく、血流が低下しやすい部位です。
摩擦やずれる力
体を起こしたり寝かせたりするときに生じる摩擦や、皮膚がずれるような力も、組織を傷める要因になります。
皮膚や栄養の状態
皮膚が乾燥していたり、汗や排せつ物で湿った状態が続いたりすることも、皮膚を弱らせる原因になります。
また、食事量が少なく栄養状態が低下していると、皮膚や組織の回復力が落ち、褥瘡ができやすくなるといわれています。
褥瘡ができやすい場所
褥瘡は、体の中でも骨が皮膚の近くにあり、圧力が集中しやすい部分にできやすいとされています。
- 腰からお尻にかけての骨が出ている部分
- かかとやくるぶしなど足の骨が出ている部分
- 肩甲骨や後頭部など、仰向けで圧力がかかりやすい部分
寝る姿勢や車いすに座る時間が長い場合は、座面に触れる部分にも褥瘡ができることがあります。
褥瘡の重症度について
褥瘡は、皮膚の赤みだけで済む軽い状態から、皮下の組織が深く傷んでしまう重い状態まで、進行の度合いに幅があります。
医療の現場では、傷の深さや範囲などをもとに重症度を段階的に評価することが一般的です。
初期の段階であれば圧迫を取り除くことで改善が見込める場合もありますが、進行すると治りにくくなるため、早い段階での気づきが重要とされています。
重症度の見極めや治療方針については、自己判断せず医師や看護師などの専門家に相談することが大切です。
褥瘡と床ずれの違い
褥瘡と床ずれは、基本的には同じ状態を指す言葉です。
「床ずれ」は、寝床で体がこすれて傷んでしまうという日常的な感覚に近い呼び方で、一般の人にもなじみのある表現です。
一方「褥瘡」は、医療や介護の専門用語として使われることが多く、カルテや看護記録、介護の記録などでは褥瘡という表記が用いられます。
| 項目 | 褥瘡 | 床ずれ |
|---|---|---|
| 使われる場面 | 医療・介護の専門用語として | 日常会話で広く使われる呼び方 |
| 指す内容 | 同じ体勢による皮膚・組織の損傷 | 同じ体勢による皮膚・組織の損傷 |
| 印象 | 専門的で正式な言葉という印象 | 身近でわかりやすい言葉という印象 |
褥瘡と皮膚炎の違い
褥瘡と皮膚炎は、どちらも皮膚に異常が出る点では似ていますが、原因や仕組みが異なります。
褥瘡は、圧迫によって血流が悪くなり組織が傷むことが主な原因です。
皮膚炎は、かぶれやかゆみ、湿疹など、刺激やアレルギー反応、感染などによって皮膚に炎症が起こる状態を広く指す言葉です。
褥瘡がある部分の皮膚が湿ったり刺激を受けたりすることで、皮膚炎のような症状を併発することもあるため、見分けが難しい場合もあります。
皮膚の変化に気づいたときは、自分で判断せず医療機関で確認してもらうことが望ましいといえます。
褥瘡を使った例文
- かかとに褥瘡ができていないか、毎日の入浴時に確認しています。
- 長期入院の患者さんには、褥瘡予防のための体位変換が欠かさず行われます。
- 褥瘡の初期段階と思われる赤みが見られたため、看護師に相談しました。
- 介護施設では、褥瘡を防ぐためにクッション性の高い寝具を使うことがあります。
褥瘡の予防方法
体位変換で圧力を分散する
定期的に体の向きを変えることで、同じ場所に圧力がかかり続けることを防ぎます。
寝具や座面を工夫する
体圧を分散しやすいクッションやマットレスを使うことも、褥瘡予防の工夫のひとつです。
皮膚の清潔と保湿を保つ
皮膚を清潔に保ち、乾燥や湿りすぎを避けることで、皮膚のバリア機能を保ちやすくなります。
栄養状態を整える
バランスのよい食事を心がけ、皮膚や組織の回復力を保つことも予防につながるとされています。
褥瘡に気づいたときの対応
皮膚に赤みや違和感を見つけたときは、まずその部分への圧迫を取り除くことが基本です。
赤みが続く場合や、皮膚の表面が傷ついているように見える場合は、早めに医師や看護師、介護職員などの専門家に相談することが望ましいといえます。
自己判断で市販薬を使ったり様子を見続けたりすると、知らないうちに状態が進んでしまうこともあるため注意が必要です。
家族が自宅で介護をしている場合は、かかりつけ医や訪問看護師など、相談できる専門家とつながっておくことも大切です。
褥瘡に関するよくある誤解
褥瘡は高齢者だけに起こるものと思われがちですが、長期間ベッド上で過ごす必要がある人であれば、年齢にかかわらず起こり得るとされています。
また、一度できてしまった褥瘡は見た目の赤みが引けばすぐに治るというものではなく、皮膚の内部の状態まで見極める必要があります。
やせている人だけに起こるという誤解もありますが、栄養状態や皮膚の状態、体を動かす力などさまざまな要因が重なって起こるため、体格だけで判断できるものではありません。
まとめ
褥瘡とは、同じ体勢が長く続くことによって皮膚や皮下の組織の血流が悪くなり、傷んでしまう状態のことです。
一般に「床ずれ」とも呼ばれますが、褥瘡は医療・介護の現場で使われる専門的な呼び方という違いがあります。
皮膚炎とは原因や仕組みが異なるものの、症状が似ていて見分けが難しい場合もあるため、皮膚の変化に気づいたら専門家に確認することが大切です。
体位変換や寝具の工夫、皮膚の観察など、日頃の小さな積み重ねが褥瘡の予防につながります。

コメント