「孤児(こじ)」という言葉は、親を亡くした子どもを表す言葉として広く知られています。しかし、実際には使われる場面によって指す範囲が異なり、必ずしも「両親を亡くした子ども」だけを意味するとは限りません。
また、日本では「孤児院」という言葉を耳にすることがありますが、現在の児童福祉制度では「児童養護施設」などの名称が使われています。
この記事では、孤児という言葉の意味や使われ方、社会的養護との関係、児童養護施設や里親制度などについてわかりやすく解説します。
孤児とは
孤児とは、一般に親を亡くした子どもを指す言葉です。
ただし、「孤児」という言葉には、すべての場面に共通する一つの厳密な定義があるわけではありません。文脈によって、両親を亡くした子どもを指す場合もあれば、父親または母親のどちらかを亡くした子どもを含める場合もあります。
そのため、統計や制度などで「孤児」という表現が使われている場合は、その資料における定義を確認することが重要です。
「孤」の意味
「孤」という漢字には、親、特に父親を失った子どもという古い意味があります。
現代の日本語では、「孤独」「孤立」などの言葉にも使われており、「ひとり」「頼るものがない」といった意味合いを持つ漢字として知られています。
「孤児」は「こじ」と読み、親を亡くした子どもを表す言葉として定着しています。
孤児にはさまざまな呼び方がある
親を失った原因や社会的背景によって、「孤児」の前に言葉を付けて表現することがあります。
戦災孤児
戦災孤児とは、戦争によって親を亡くした子どもを指す言葉です。
日本では、特に第二次世界大戦中から終戦後にかけて、空襲や戦闘などによって多くの子どもが親を失いました。
戦争によって親や生活基盤を失った子どもたちの存在は、戦後日本における大きな社会問題の一つとなりました。
震災孤児
震災孤児とは、地震や津波などの震災によって両親を亡くした子どもなどを指して使われる言葉です。
大規模災害では、子ども自身が被災するだけでなく、保護者を失うケースも発生します。そのため、生活面だけではなく、心理面や教育面を含めた長期的な支援が重要になります。
なお、災害関連の支援や統計では、「震災孤児」と「震災遺児」などを区別して用いる場合があります。具体的な意味は、それぞれの制度や資料で確認する必要があります。
孤児と遺児の違い
「孤児」と似た言葉に「遺児(いじ)」があります。
遺児とは、一般に父親や母親などの保護者を亡くした子どもを指します。「交通遺児」「震災遺児」などの表現が代表的です。
一方、「孤児」は親を失った子どもを指す言葉ですが、両親を亡くした場合を中心に使われることもあります。
ただし、これらの言葉の範囲は使用する団体や制度、文脈などによって異なることがあります。そのため、「孤児は必ず両親を亡くした子ども」「遺児は必ず片親だけを亡くした子ども」と単純に区別できるものではありません。
孤児院とは
「孤児院」は、親を亡くした子どもなどを養育する施設を表す一般的な呼称として知られています。
しかし、現在の日本の児童福祉制度では「孤児院」という名称が正式な施設種別として使われているわけではありません。
現在、その役割に近い施設の一つが「児童養護施設」です。
児童養護施設とは
児童養護施設は、児童福祉法に基づく児童福祉施設の一つです。
保護者のいない児童だけを対象としているわけではなく、虐待されている児童や、その他の環境上養護を必要とする児童なども対象となります。
つまり、児童養護施設で暮らしている子どもたちが、すべて親を亡くした「孤児」というわけではありません。
この点は、「児童養護施設=孤児院」と考えた場合に生じやすい誤解です。
社会的養護とは
親と暮らすことが難しい子どもを社会全体で養育し、保護する仕組みは「社会的養護」と呼ばれています。
子どもが家庭で生活できなくなる理由は、親との死別だけではありません。虐待、保護者の疾病、養育上のさまざまな事情などによって、家庭での養育が難しくなる場合があります。
そのような子どもたちに対して、安全な生活環境を確保し、成長や自立を支援することが社会的養護の重要な役割です。
社会的養護には施設だけでなく里親もある
社会的養護というと児童養護施設をイメージする人も多いかもしれませんが、子どもを支える方法は施設での養育だけではありません。
代表的な仕組みの一つが「里親制度」です。
里親制度では、さまざまな事情によって実親と暮らすことのできない子どもを、都道府県知事などから委託を受けた里親が家庭で養育します。
また、家庭に近い環境で少人数の子どもを養育する「ファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)」などもあります。
このように、日本の社会的養護は複数の仕組みによって構成されています。
里親と養子縁組は同じではない
里親制度と養子縁組は混同されることがありますが、制度としては異なります。
里親は、児童相談所などを通じて委託された子どもを一定期間家庭で養育する仕組みです。里親になったことによって、原則として子どもとの法律上の親子関係が成立するわけではありません。
一方、養子縁組は法律上の親子関係を成立させる制度です。
そのため、「親と暮らせない子どもを家庭で育てる」という点では共通する部分があっても、法的な位置付けや目的は異なります。
世界における孤児という言葉
世界的にも、孤児を意味する「orphan」という言葉が使われています。
ただし、国際機関や統計では、日常的なイメージとは異なる定義が採用されることがあります。
例えば、父母の一方を亡くした子どもを含めて「orphan」と定義する統計もあります。そのため、世界の孤児数などの数字を見る際には、「どのような子どもを孤児として数えているのか」を確認することが欠かせません。
同じ「孤児」という日本語に訳されていても、資料によって対象となる子どもの範囲が異なる可能性があります。
「孤児」という言葉を使うときの注意点
「孤児」は現在でも使用される言葉ですが、子ども本人の置かれた状況は一人ひとり異なります。
親を亡くした子どもだけでなく、親が存命でも家庭で生活できない子どももいます。また、児童養護施設で生活しているからといって、親がいないとは限りません。
そのため、現代の児童福祉について説明するときは、状況に応じて「社会的養護を必要とする子ども」「児童養護施設で生活する子ども」「里親家庭で生活する子ども」など、より具体的な表現を用いることで実態を正確に伝えられます。
まとめ
孤児とは、一般に親を亡くした子どもを指す言葉です。ただし、両親を亡くした子どものみを指す場合もあれば、父母の一方を亡くした子どもを含める場合もあり、その定義は文脈によって異なります。
また、現在の日本では、親を亡くした子どもだけでなく、虐待や保護者の疾病などさまざまな事情によって家庭で暮らすことが難しい子どもたちを、社会的養護の仕組みによって支えています。
その仕組みには児童養護施設のほか、里親制度やファミリーホームなどがあります。
「孤児=児童養護施設で暮らす子ども」と考えるのではなく、「孤児」という言葉の意味と、現代の社会的養護の仕組みを分けて理解することが大切です。


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