遺言とは?意味・種類・書き方・法的効力・遺書との違いをわかりやすく解説

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遺言(いごん・ゆいごん)とは、自分が亡くなった後の財産の分け方などについて、生前に意思を示すことです。

日本では、民法で定められた方式に従って遺言書を作成することで、財産の相続や遺贈などについて法的効力を持たせることができます。

遺言は、財産を多く持っている人だけに関係する制度ではありません。自宅や預貯金などの財産がある場合、誰に何を引き継いでもらうかを明確にしておくことで、相続手続きを円滑に進めやすくなります。

この記事では、遺言の意味や種類、遺言書の書き方、法的効力、遺書との違いについてわかりやすく解説します。

遺言とは?

遺言とは、本人が死亡した後に実現させたい一定の事項について、法律で定められた方式に従って行う意思表示です。

民法第960条では、遺言について、法律に定める方式に従わなければならないと規定しています。

そのため、単に家族へ口頭で希望を伝えたり、法律上の方式を満たさないメモを残したりするだけでは、原則として有効な遺言にはなりません。

また、遺言には法的効力が認められる事項と、本人の希望を伝えるにとどまる事項があります。

例えば、財産の分け方については法律上の要件を満たすことで効力が生じますが、「兄弟仲良く暮らしてほしい」といった家族へのメッセージには、通常、法的な拘束力はありません。

遺言の読み方は「いごん」と「ゆいごん」のどちら?

遺言には「いごん」と「ゆいごん」という2つの読み方があります。

日常会話では「ゆいごん」と読むことが一般的ですが、法律の分野では「いごん」と読むことが多くあります。

どちらも同じ漢字を使用しており、読み方によって法律上の意味が変わるわけではありません。

遺言でできること

遺言では、法律で認められた範囲内で、財産の承継や身分関係などに関する事項を定められます。

代表的なものを紹介します。

1. 財産の分け方を指定する

遺言では、相続人に財産をどのように分けるかを指定できます。

例えば、次のような内容です。

  • 自宅の土地と建物を配偶者に相続させる
  • 特定の預貯金を長男に相続させる
  • 特定の不動産を次男に相続させる

遺言がない場合、相続人が複数いると、遺産分割協議などによって財産の分け方を決める必要が生じることがあります。

遺言によって財産の承継先を明確にしておけば、相続人が判断しなければならない事項を減らせる場合があります。

2. 法定相続人以外の人に財産を残す

遺言では、法定相続人以外の人や団体に財産を譲る「遺贈(いぞう)」を行えます。

例えば、長年世話になった知人や、支援している公益法人などに財産を残すことが可能です。

ただし、財産の種類や遺言の内容によって、相続人との調整や税務上の手続きが必要になる場合があります。

3. 遺言執行者を指定する

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人です。

遺言では、この遺言執行者を指定できます。

遺言執行者は、権限の範囲内で財産の管理や遺言の執行に必要な行為を行います。

4. 子どもの認知をする

婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもについて、父親が遺言によって認知することも認められています。

遺言による認知については、遺言執行者が所定の届出を行う必要があります。

5. 未成年後見人を指定する

未成年者に対して最後に親権を行う人は、一定の条件のもとで、遺言によって未成年後見人を指定できます。

ただし、他に親権を行う人がいる場合など、指定できないケースもあります。

遺言の種類

日本の民法では、普通方式の遺言として3つの種類が定められています。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者本人が原則として全文を手書きして作成する遺言です。

作成にあたっては、本文・日付・氏名を自書し、押印する必要があります。

財産目録については、所定の条件を満たせばパソコンで作成したものや通帳のコピーなどを添付できます。

ただし、自書によらない財産目録には、各ページに署名と押印が必要です。両面に記載がある場合は、両面それぞれに署名と押印が必要になります。

自分で作成できる一方、方式に不備があると無効になるおそれがあります。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証人が関与し、法律で定められた手続きに従って作成する遺言です。

原則として、証人2人以上の立ち会いが必要です。

公証人が遺言の内容や本人の意思を確認しながら作成するため、方式の不備による無効のリスクを抑えやすいという特徴があります。

また、原本は公証役場で保管されます。

作成には、公証人手数料などの費用がかかります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言の内容を秘密にしたまま、本人が作成した遺言書の存在などについて公証人による所定の手続きを受ける方式です。

遺言書を封筒に入れて封印し、公証人1人と証人2人以上の前に提出するなど、法律で定められた手続きを行います。

ただし、公証人が遺言書の内容を確認するわけではないため、内容や方式に不備が残る可能性があります。

3種類の遺言の違い

それぞれの特徴を整理すると、次のようになります。

自筆証書遺言

  • 作成方法:本人が原則として全文を手書きする
  • 証人:不要
  • 費用:自分で作成する場合、公証人手数料は不要
  • 保管方法:自宅での保管や法務局の保管制度を利用できる
  • 検認:法務局の保管制度を利用していない場合は原則として必要

公正証書遺言

  • 作成方法:公証人が法律上の手続きに従って作成する
  • 証人:原則として2人以上必要
  • 費用:公証人手数料などが必要
  • 保管方法:原本は公証役場で保管される
  • 検認:不要

秘密証書遺言

  • 作成方法:内容を秘密にしたまま、公証人と証人の関与を受けて作成する
  • 証人:2人以上必要
  • 費用:公証人手数料などが必要
  • 保管方法:原則として本人などが保管する
  • 検認:原則として必要

このほか、死亡の危急が迫っている場合など、法律で定められた特別な状況に対応する特別方式の遺言もあります。

遺言書の書き方

ここでは、自筆証書遺言を作成する場合の基本的な流れを紹介します。

1. 財産を整理する

最初に、自分が所有する財産を整理します。

代表的な財産には、次のようなものがあります。

  • 現金・預貯金
  • 土地・建物
  • 株式・投資信託
  • 自動車
  • 貸付金などの債権

借入金などの債務についても、相続人が状況を把握できるように整理しておくことが重要です。

ただし、遺言によって債務の負担者を指定しても、その指定だけで債権者に対する責任を自由に変更できるわけではありません。

2. 財産を引き継ぐ人を決める

財産を誰に引き継いでもらうかを決めます。

相続人の氏名や続柄を確認し、対象となる財産を具体的に特定することが重要です。

不動産の場合は、登記事項証明書に記載された所在や地番などを確認しておくと、対象を明確にできます。

3. 遺言書の本文を作成する

自筆証書遺言では、原則として本文を本人が手書きします。

財産の承継先が明確になるように記載し、曖昧な表現を避けます。

例えば、「預貯金を子どもたちに任せる」といった表現では、具体的な分配方法が明確にならない可能性があります。

誰に、どの財産を、どのように引き継がせるのかを具体的に記載することが重要です。

4. 日付・氏名を自書し、押印する

自筆証書遺言には、日付と氏名を自書し、押印する必要があります。

日付は、作成年月日を特定できるように記載します。

「2026年9月吉日」のように、具体的な日を特定できない表現は避けなければなりません。

5. 遺言書を適切に保管する

作成した遺言書は、紛失や改ざんを防ぎ、死亡後に発見してもらえる方法で保管します。

自宅で保管する方法のほか、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法があります。

遺言書を法務局に預ける制度とは?

自筆証書遺言書保管制度とは、自分で作成した遺言書を法務局で保管してもらえる制度です。

2020年7月10日に開始されました。

この制度を利用することで、遺言書の紛失や第三者による改ざんなどのリスクを軽減できます。

また、法務局に保管された遺言書については、相続開始後に家庭裁判所の検認を受ける必要がありません。

ただし、法務局は遺言書の内容が法的に有効かどうかまで保証するわけではありません。

遺言はいつから効力が発生する?

遺言は、原則として遺言者が死亡した時点から効力が発生します。

例えば、2026年に遺言書を作成し、2036年に亡くなった場合、遺言の効力が発生するのは原則として2036年の死亡時です。

遺言書を作成した時点で、財産の所有権が相続人に移転するわけではありません。

なお、停止条件が付された遺言については、条件の成就時期によって効力発生の時期が異なる場合があります。

遺言書は書き直せる?

遺言者は、生前であれば、法律で定められた方式に従って遺言の全部または一部を撤回できます。

例えば、財産の状況や家族構成が変わった場合、新しい遺言書を作成することが可能です。

前の遺言と後の遺言の内容が抵触する場合、抵触する部分については、原則として後の遺言によって前の遺言が撤回されたものとみなされます。

ただし、新しい遺言書に方式上の不備があると、意図した変更が実現しない可能性があります。

遺言と遺書の違い

遺言と遺書は、どちらも亡くなる前に残す文書ですが、主な目的が異なります。

遺言

主な目的: 財産の承継などを指定すること。

法的効力: 法律上の要件を満たせば生じる。

作成方法: 民法で定められた方式に従う必要がある。

内容の例: 相続、遺贈、認知など。

遺書

主な目的: 家族や知人に自分の思いを伝えること。

法的効力: 通常は生じない。

作成方法: 原則として自由。

内容の例: 感謝、謝罪、家族へのメッセージなど。

遺書でも法的効力が認められる場合がある

文書の表題が「遺書」であっても、遺言として必要な内容と方式を満たしていれば、法律上の遺言として効力が認められる可能性があります。

重要なのは、文書の名称ではなく、内容と作成方法です。

遺言書を作成する際の注意点

遺留分に注意する

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障されている、遺産に対する最低限の取り分です。

遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の相続人です。

例えば、配偶者と子どもがいる場合、遺言によって財産を特定の人に集中させると、遺留分を侵害された相続人から金銭の支払いを請求される可能性があります。

遺留分を侵害する遺言が当然に無効になるわけではありませんが、相続人間の紛争につながることがあります。

遺言書の方式を守る

遺言書は、法律で定められた方式を満たしていなければ、無効になる場合があります。

特に自筆証書遺言では、日付や署名、押印などの要件に注意が必要です。

また、遺言書を作成した後に内容を変更する場合も、法律で定められた方式に従う必要があります。

遺言能力が必要

民法では、15歳に達した人は遺言をすることができると定められています。

ただし、遺言をする時点で、遺言の内容や結果を理解し、判断できる能力が必要です。

年齢の条件を満たしていても、遺言能力がなければ遺言が無効となる可能性があります。

遺言書が見つかった場合はどうする?

亡くなった人の遺言書が見つかった場合、遺言書の種類によって必要な手続きが異なります。

公正証書遺言の場合

公正証書遺言については、家庭裁判所の検認を受ける必要はありません。

遺言の内容を確認し、必要な相続手続きを進めます。

法務局に保管された自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言書保管制度を利用して法務局に保管されていた遺言書についても、家庭裁判所の検認は不要です。

相続人などは、所定の手続きによって遺言書情報証明書の交付などを請求できます。

自宅などで保管されていた遺言書の場合

自宅などで保管されていた自筆証書遺言や秘密証書遺言については、原則として家庭裁判所で検認を受ける必要があります。

封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立ち会いのもとに開封しなければなりません。

検認は、遺言書の状態や内容を確認して証拠を保全するための手続きであり、遺言の有効性を判断するものではありません。

遺言に関するよくある質問

Q. 遺言書は必ず作成しなければならない?

遺言書の作成は義務ではありません。

遺言書がない場合でも、民法で定められた相続のルールに従って財産を承継できます。

ただし、相続人が複数いる場合や、特定の人に財産を残したい場合などには、遺言書を作成しておくことで本人の意思を明確にできます。

Q. 遺言書はパソコンで作成できる?

自筆証書遺言では、原則として本文を本人が手書きする必要があります。

ただし、財産目録については、法律で定められた条件を満たせばパソコンなどで作成できます。

公正証書遺言や秘密証書遺言については、自筆証書遺言とは異なる作成方式が認められています。

Q. 遺言書に有効期限はある?

遺言書には、作成から何年以内に使用しなければならないという一般的な有効期限はありません。

法律上有効な遺言であれば、作成から長期間が経過していても、原則として効力を持ちます。

ただし、財産の状況や家族構成が変わった場合には、遺言の内容が実情に合わなくなる可能性があります。

Q. 遺言書が複数見つかった場合はどうなる?

複数の遺言書が存在する場合、原則として、それぞれの作成時期や内容を確認する必要があります。

前の遺言と後の遺言が抵触する部分については、後の遺言によって前の遺言が撤回されたものとみなされます。

ただし、後の遺言が前の遺言のすべてを自動的に無効にするわけではありません。

抵触しない部分については、前の遺言の効力が残る場合があります。

Q. 家族全員の同意がなければ遺言書を作成できない?

遺言書の作成に、家族全員の同意は必要ありません。

遺言は、本人が単独で行う法律行為です。

ただし、法律上の方式を守ることや、遺言能力があることなど、有効な遺言として認められるための要件を満たす必要があります。

まとめ

遺言とは、自分が亡くなった後の財産の分け方などについて、法律で定められた方式に従って意思を示すことです。

遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などの種類があり、それぞれ作成方法や保管方法が異なります。

適切な遺言書を作成しておくことで、本人の意思を相続に反映させやすくなり、遺産分割をめぐるトラブルの予防にもつながります。

ただし、遺言書には法律上の方式や遺留分などの注意点があります。

財産の種類が多い場合や、相続関係が複雑な場合には、弁護士や公証人などの専門家に相談しながら作成することが重要です。

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