イコールアース図法(Equal Earth projection)とは、地球上の国や大陸などの面積の比率を正しく保ちながら、世界全体を見やすく表現するために開発された地図投影法です。
世界地図にはメルカトル図法やモルワイデ図法、ロビンソン図法などさまざまな図法がありますが、イコールアース図法は比較的新しく、2018年に発表されました。
面積を正しく表現できる「正積図法」でありながら、大陸の形を比較的自然でバランスよく見せることを目指して設計されているのが大きな特徴です。
イコールアース図法とは
イコールアース図法は、世界地図を作成するための**正積擬円筒図法(equal-area pseudocylindrical projection)**です。
正積図法とは、地球上に存在する地域同士の面積比を地図上でも正しく維持する図法を指します。
たとえば、現実の地球上でAという地域の面積がBという地域の2倍であれば、正積図法で描かれた地図上でもAの面積はBの2倍になります。
地球はほぼ球形であるため、その表面を平面の地図に変換すると、面積・角度・距離・方位・形などのすべてを同時に完全に正しく表現することはできません。
そのため、地図は用途に応じて「何を正しく表現するのか」を選ぶ必要があります。
イコールアース図法では、その中でも特に面積を正しく表現することが重視されています。
イコールアース図法は2018年に発表された
イコールアース図法は、Bojan Šavrič(ボヤン・シャヴリッチ)、Tom Patterson(トム・パターソン)、Bernhard Jenny(ベルンハルト・イェニー)の3人によって開発されました。
研究論文「The Equal Earth map projection」は2018年8月7日にオンライン公開されています。
イコールアース図法は、広く利用されてきたロビンソン図法から着想を得ています。
ロビンソン図法は世界全体を視覚的にバランスよく見せることを重視した図法ですが、正積図法ではありません。
そこでイコールアース図法では、ロビンソン図法のような見やすい世界地図の外観を目指しながら、同時に正積性を持たせることが目指されました。
イコールアース図法の特徴
イコールアース図法には、いくつかの重要な特徴があります。
面積の比率を正しく表現できる
最大の特徴は、地球上の地域の面積比を正しく維持できることです。
世界地図では、使用する図法によって国や大陸の見かけの大きさが大幅に変わることがあります。
イコールアース図法では正積性が保たれるため、アフリカ、ヨーロッパ、北米、南米などの大陸や各国の面積を比較するときに、地図上の面積による誤解が生じにくくなります。
大陸の形が比較的自然に見える
正積図法では、面積を維持する代わりに形が大きく変形して見える場合があります。
イコールアース図法は正積性を保ちながら、世界地図全体の形や大陸の輪郭が視覚的にバランスよく見えるよう設計されています。
完全に形が正しいわけではありませんが、面積を正しく表現しつつ、世界地図としての見やすさにも配慮されている点が特徴です。
緯線が直線になる
イコールアース図法では緯線が直線として描かれます。
そのため、ある場所が赤道からどの程度北または南に位置しているのかを視覚的に比較しやすいという特徴があります。
一方、地図の左右の外周は曲線となり、地球が球形であることを連想させるような外観になります。
メルカトル図法との違い
世界地図の代表的な図法として知られているのがメルカトル図法です。
メルカトル図法とイコールアース図法では、地図を作る際に重視している性質が異なります。
| 比較項目 | イコールアース図法 | メルカトル図法 |
|---|---|---|
| 主な性質 | 正積図法 | 正角図法 |
| 面積 | 面積比を正しく表現 | 高緯度ほど大きく拡大される |
| 角度 | 正角ではない | 局所的な角度を保つ |
| 世界地図の外形 | 丸みを帯びる | 長方形 |
| 世界規模の面積比較 | 適している | 適していない |
メルカトル図法は正角図法であり、局所的な角度を正しく表現できるという重要な特徴があります。
一方で、高緯度になるほど面積が大きく拡大されます。
そのため、メルカトル図法による世界地図では、北極や南極に近い地域が実際よりも非常に大きく見えることがあります。
イコールアース図法では面積比が維持されるため、世界各地の面積を比較する用途では、こうした問題を避けることができます。
ロビンソン図法との違い
イコールアース図法の外観は、ロビンソン図法から着想を得ています。
ロビンソン図法は、世界全体を視覚的に自然でバランスよく表現することを目的とした図法です。
ただし、ロビンソン図法は正積図法ではないため、地域間の面積比を完全には維持しません。
一方、イコールアース図法は世界地図としての視覚的なバランスに配慮しながら、正積性を備えています。
| 比較項目 | イコールアース図法 | ロビンソン図法 |
|---|---|---|
| 面積 | 面積比を維持する | 面積比は完全には維持しない |
| 見た目 | バランスを重視 | バランスを重視 |
| 分類 | 正積擬円筒図法 | 擬円筒図法 |
| 主な用途 | 世界規模の分布・面積比較など | 一般的な世界地図など |
モルワイデ図法との違い
モルワイデ図法もイコールアース図法と同じく、面積を正しく表現できる正積図法です。
そのため、世界規模の統計データなどを地図上で表現する用途に利用できます。
両者とも正積性を持っていますが、地図上での大陸の形や世界全体の外観は異なります。
イコールアース図法は、正積性だけでなく大陸の輪郭を視覚的にバランスよく表現することも重視して設計されています。
イコールアース図法のメリット
イコールアース図法の大きなメリットは、世界各地の面積を公平に比較できることです。
たとえば、世界の森林面積や農地、人口分布、気候、植生などを地図上に表示するとき、地図そのものによって高緯度地域の面積が過度に強調されると、データの印象にも影響する可能性があります。
正積図法であるイコールアース図法なら、各地域の面積比が正しく維持されるため、面積と関係する世界規模のデータを表現するのに適しています。
また、正積性を備えながら、世界地図として比較的自然で認識しやすい大陸の形を目指して設計されている点もメリットです。
イコールアース図法のデメリット
イコールアース図法も万能な地図投影法ではありません。
面積を正しく維持する代わりに、場所によって形や角度などに歪みが生じます。
そのため、正確な角度を必要とする用途や、地図上で距離をそのまま正確に測定したい用途などには適していません。
これはイコールアース図法だけの欠点ではなく、球面に近い地球を平面に変換する地図投影法が避けられない問題です。
目的に応じて適切な図法を選択する必要があります。
イコールアース図法はどんな用途に向いている?
イコールアース図法は、世界全体を対象として面積や分布を比較する地図に向いています。
たとえば、世界の人口分布、森林分布、土地利用、農地、自然環境、生物多様性などを表現する主題図で、正積図法の性質を生かすことができます。
特に、地図上で塗られた範囲の広さ自体が情報の受け取り方に影響するような場合には、面積比を維持することが重要になります。
反対に、道路地図や詳細な地域地図など、世界全体の面積比較を目的としない地図では、別の図法のほうが適している場合があります。
なぜ世界地図にはさまざまな図法があるのか
地図を見るときに重要なのは、「どの図法が最も正しいか」ではなく、何を正しく表現するための図法なのかを理解することです。
地球の曲面を平面に変換する以上、すべての性質を完全に維持することはできません。
面積を優先する正積図法、角度を優先する正角図法、特定地点からの距離を正しく表現する正距方位図法など、目的によって適切な図法は変わります。
イコールアース図法は、その中でも「世界各地の面積比を正しく表現しながら、世界地図としての見やすさも重視する」という目的を持った図法です。
まとめ
イコールアース図法(Equal Earth projection)は、2018年に発表された比較的新しい世界地図の投影法です。
最大の特徴は正積図法であり、地球上の国や大陸などの面積比を正しく維持できることです。
さらに、ロビンソン図法のような視覚的にバランスのよい世界地図から着想を得ており、正積性と見やすさの両立を目指して設計されています。
メルカトル図法のように高緯度地域の面積が大きく拡大されることがないため、世界各地の面積や分布を比較する地図に適しています。
ただし、面積を正しく表現する代わりに形や角度などには歪みが生じるため、すべての用途に適した図法ではありません。
世界地図を見る際には、描かれている国や大陸の形だけを見るのではなく、「どの図法が使われ、何を正しく表現しようとしている地図なのか」を意識することが重要です。


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