核融合発電とは?仕組みやメリット、核分裂との違い、実用化への課題をわかりやすく解説

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核融合発電とは、軽い原子核同士が融合するときに放出されるエネルギーを利用して電気をつくる発電方式です。

太陽をはじめとする恒星も核融合によってエネルギーを生み出していることから、「地上の太陽」と表現されることもあります。

燃料資源の確保や温室効果ガス排出削減などの観点から将来のエネルギー源として期待されていますが、商用発電を実現するためには解決すべき技術的・経済的課題が残されています。

この記事では、核融合発電の仕組みや核分裂との違い、メリット、実用化に向けた課題について解説します。

核融合とは

核融合とは、2つの軽い原子核が融合して、より重い原子核になる反応です。

核融合が起こると、反応前後のわずかな質量の差がエネルギーへと変換されます。アインシュタインの「E=mc²」で示される質量とエネルギーの関係によるものです。

核融合発電では、このとき発生する非常に大きなエネルギーを発電に利用することが考えられています。

核融合発電では何を燃料にするのか

現在、核融合発電の実現に向けて中心的に研究されている反応が、重水素(D)と三重水素(T:トリチウム)の核融合です。

反応は次のように表せます。

重水素 + 三重水素 → ヘリウム4 + 中性子 + エネルギー

1回のD-T核融合反応では、約17.6MeVのエネルギーが放出されます。

重水素は水素の同位体で、天然の水にも含まれています。一方、放射性同位体である三重水素は自然界に大量に存在するものではありません。

将来の核融合炉では、核融合反応によって発生した中性子をリチウムに当て、炉内で三重水素を生産する仕組みが重要になると考えられています。

核融合発電の仕組み

D-T核融合で発生するエネルギーの大部分は、高速の中性子が持っています。

将来の核融合発電所では、この中性子のエネルギーを炉の周囲に設置されたブランケットで熱として回収し、その熱を発電に利用する方式が想定されています。

基本的な流れは、

核融合反応 → 中性子のエネルギーを熱として回収 → 熱を利用して蒸気などを生成 → タービンを回転 → 発電機で発電

というものです。

核融合という特殊な反応を利用するものの、熱を取り出してタービンなどを動かすという部分は、火力発電や現在の原子力発電と共通する考え方があります。

なぜ核融合には非常に高い温度が必要なのか

原子核は正の電荷を持っているため、原子核同士を近づけようとすると電気的な反発力が働きます。

核融合を起こすには、この反発を乗り越えて原子核同士を非常に近い距離まで接近させなければなりません。

そのため、地上でD-T核融合を効率よく起こすには、燃料を1億℃を超える非常に高い温度まで加熱し、原子核と電子が分離した「プラズマ」という状態にする必要があります。

国際熱核融合実験炉ITERでは、約1億5,000万℃のプラズマを扱うことが想定されています。

1億℃を超えるプラズマをどうやって閉じ込めるのか

1億℃を超えるプラズマを通常の容器に直接触れさせて保持することはできません。

そこで研究されている代表的な方法が「磁場閉じ込め方式」です。

プラズマは電気を帯びた粒子で構成されているため、強力な磁場を利用してその動きを制御できます。

磁場閉じ込め方式の代表例が「トカマク型」です。

トカマク型では、ドーナツ状の装置内部に強力な磁場をつくり、その中に高温プラズマを閉じ込めます。

日本を含む各国・地域が参加してフランスで建設を進めている国際熱核融合実験炉「ITER」もトカマク型を採用しています。

このほか、レーザーなどを燃料に集中させ、瞬間的に圧縮・加熱する「慣性閉じ込め方式」なども研究されています。

核融合発電と原子力発電の違い

現在の原子力発電所で利用されている核分裂と核融合は、どちらも原子核の反応からエネルギーを取り出しますが、原理は大きく異なります。

項目核融合核分裂
基本原理軽い原子核を融合させる重い原子核を分裂させる
代表的な燃料重水素・三重水素ウラン235など
反応原子核の融合原子核の分裂
連鎖反応核分裂のような連鎖反応ではない中性子による連鎖反応を利用
発電の実用化研究開発段階商用発電で利用されている
放射性廃棄物中性子による構造材料の放射化などが課題使用済み核燃料などが発生

核融合では、核分裂炉で利用されるような核分裂の連鎖反応を維持する仕組みを使いません。

一方で、「核融合なら放射性物質や放射性廃棄物がまったく発生しない」という説明は正確ではありません。

D-T核融合では三重水素という放射性物質を扱うほか、核融合によって発生する高速中性子によって炉の構造材料が放射化します。そのため、放射線管理や放射化した材料の取り扱いは核融合炉でも重要な課題です。

核融合発電のメリット

核融合発電が将来のエネルギー源として期待される理由の一つは、燃料となる資源の確保に関する可能性です。

重水素は水に含まれているため、資源として広く存在しています。三重水素については、将来の核融合炉でリチウムから生産する仕組みの確立が目指されています。

また、核融合反応そのものは石炭や天然ガスなどの化石燃料を燃焼させるものではありません。そのため、発電時に燃焼によって二酸化炭素を排出する火力発電とは性質が異なり、脱炭素化に貢献するエネルギー源として期待されています。

さらに、核分裂のような連鎖反応を利用しないことも特徴です。核融合反応を維持するためには極めて厳しいプラズマ条件が必要であり、その条件が崩れると核融合反応は持続できなくなります。

核融合発電の課題

核融合反応そのものを発生させることは、すでに実験施設で実現されています。

しかし、「核融合反応を起こせること」と「核融合を使って商業的に発電できること」は別の問題です。

核融合発電を実用化するには、非常に高温のプラズマを安定して長時間維持する技術が必要です。

さらに、大量の高速中性子に長期間耐えられる材料の開発、三重水素の生産・回収・管理、核融合エネルギーを効率的に熱として取り出す技術、設備の遠隔保守、発電設備全体のエネルギー効率なども重要になります。

そして最終的には、発電所を建設・維持して電力を供給するためのコストを含め、経済的に成立させなければなりません。

核融合で「投入した以上のエネルギー」が出れば発電できるのか

核融合に関するニュースでは、「エネルギー利得」や「Q」という言葉が登場することがあります。

ただし、どの範囲の入力エネルギーと出力エネルギーを比較しているのかを確認することが重要です。

例えばITERが目標としている「Q=10」は、プラズマを加熱するために50MWの加熱パワーを投入し、500MWの核融合パワーを発生させることを意味します。

これは発電所全体として投入した電力の10倍の電力を発電できる、という意味ではありません。

ITER自体も発電所ではなく、核融合による熱を電力に変換して送電することを目的とした施設ではありません。

実際の核融合発電所を成立させるには、プラズマ加熱、超電導磁石、冷却装置、ポンプなど発電所全体で消費するエネルギーも考慮し、最終的に外部へ供給できる正味の電力を確保する必要があります。

ITERとは

ITERは、核融合エネルギーの科学的・技術的実現性を研究するため、フランス南部で建設が進められている大型の国際プロジェクトです。

日本、欧州、中国、インド、韓国、ロシア、米国が参加しています。

ITERではD-T核融合を利用し、50MWのプラズマ加熱入力に対して500MWの核融合出力、つまりQが10以上となる状態を目標としています。

ただし、ITERは商用発電所ではなく、発生した核融合エネルギーを電力として供給する施設ではありません。

ITERで得られる知見は、その後の核融合発電の実証や商用化に向けた重要な基盤になると考えられています。

核融合発電はいつ実用化される?

核融合発電の実用化時期を特定の年として断定することはできません。

核融合研究では、核融合反応を起こすだけでなく、発電所として必要となる複数の技術を統合し、長期間安定して運転できることを実証する必要があります。

日本でも、核融合エネルギーを実際の発電につなげる原型炉などに関する研究開発が進められています。

今後は、

核融合プラズマの研究 → 核融合エネルギーの大規模な実証 → 発電実証 → 経済性や保守性の検証 → 商用化

といった段階を進めていく必要があります。

研究開発が大きく進展している一方で、商用核融合発電所がいつ実現するかについては、今後の技術開発や実証結果に左右されます。

まとめ

核融合発電とは、重水素や三重水素などの軽い原子核を融合させ、そのときに発生するエネルギーを利用して発電する技術です。

太陽や恒星で起きている核融合と同じ種類の原子核反応を地上で制御し、エネルギー源として利用しようとする技術ともいえます。

燃料資源の確保や脱炭素化などの面から大きな期待が寄せられていますが、超高温プラズマの長時間制御、中性子に耐える材料、三重水素の生産、熱回収、保守、発電所全体のエネルギー収支、経済性など、解決しなければならない課題も数多く残されています。

そのため、核融合に関する実験で大きな成果が発表された場合でも、「核融合反応に成功した」「核融合でエネルギー利得を達成した」「核融合による発電を実証した」「商用発電を実現した」という段階を区別して理解することが重要です。

核融合発電はすでに商用化された技術ではありませんが、将来のエネルギー供給を担う可能性を持つ技術として、世界各地で研究開発が続けられています。

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