民事訴訟とは、個人や企業などの間で発生した民事上の紛争について、裁判所に判断を求めて解決を図るための手続きです。
「貸したお金を返してもらえない」「契約代金が支払われない」「交通事故の損害賠償について話し合いがまとまらない」といったトラブルが代表的です。
この記事では、民事訴訟の意味や対象となるトラブル、裁判の基本的な流れ、刑事訴訟との違い、判決後の強制執行などについてわかりやすく解説します。
民事訴訟とは
民事訴訟とは、私人間の権利や義務をめぐる紛争について、裁判所に法的な判断を求める手続きです。
たとえば、知人に100万円を貸したものの約束した期日を過ぎても返済されない場合、貸した側が返還を求めて民事訴訟を起こすことがあります。
ほかにも、売買代金や請負代金の未払い、建物の明渡し、契約違反による損害賠償など、さまざまな問題が民事訴訟の対象となります。
民事訴訟の目的は犯罪者を処罰することではなく、当事者間の民事上の権利・義務を裁判所の判断によって確定し、紛争を解決することにあります。
民事訴訟では誰と誰が争う?
民事訴訟では、裁判を起こした側を「原告」、訴えられた側を「被告」と呼びます。
たとえば、AさんがBさんに100万円を貸し、返済されなかったため裁判を起こしたとします。
この場合、裁判を起こしたAさんが原告、訴えられたBさんが被告です。
なお、刑事裁判では起訴された人を「被告人」と呼びます。「被告」と「被告人」は似た言葉ですが、民事訴訟と刑事訴訟で使い分けられています。
民事訴訟の対象になる主なトラブル
民事訴訟では、さまざまな民事上のトラブルが扱われます。
代表的なものとして、次のようなケースがあります。
- 貸したお金の返還
- 売買代金や請負代金などの支払い
- 家賃の滞納
- 建物や土地の明渡し
- 契約違反による損害賠償
- 交通事故による損害賠償
- 不動産の所有権をめぐる争い
このほかにも、法律上の権利や義務をめぐるさまざまな紛争について民事訴訟が利用されています。
民事訴訟では何を争うのか
民事訴訟では、原告が裁判所に対して具体的な判決を求めます。
たとえば貸金をめぐる裁判であれば、原告が「被告は原告に100万円を支払え」という内容の判決を求めることがあります。
これに対して被告が「そもそも借りていない」「すでに返済した」などと反論することもあります。
裁判では、当事者がそれぞれ主張を行い、その主張を裏付ける証拠を提出します。
裁判所は、当事者から示された主張や証拠などに基づいて判断します。
そのため民事訴訟では、何を主張するのかだけでなく、それをどのような証拠によって裏付けられるのかも重要になります。
民事訴訟の基本的な流れ
一般的な民事訴訟は、訴えの提起から始まり、当事者による主張・立証を経て、和解または判決によって解決へ向かいます。
1.訴えを起こす
民事訴訟を始める場合、原告が管轄する裁判所に訴状を提出します。
訴状には、どのような判決を求めるのか、その請求を基礎づける事実などを記載します。
2.被告に訴状などが送達される
裁判所が訴状を受理すると、原則として訴状の副本や期日の呼出状などが被告に送達されます。
被告は訴状の内容を確認し、原告の請求を認めるのか争うのかなどを答弁書によって示します。
3.原告と被告が主張・立証する
裁判では、原告と被告がそれぞれの主張を行い、必要な証拠を提出します。
証拠として利用されるものは事件によって異なりますが、契約書、領収書、メール、写真などがあります。
必要に応じて証人尋問や当事者本人の尋問などが行われることもあります。
4.和解によって解決する場合もある
民事訴訟は、必ず判決まで進むわけではありません。
裁判の途中で原告と被告が合意し、裁判上の和解によって訴訟が終了することもあります。
裁判所から和解について働きかけが行われる場合もあります。
5.判決が言い渡される
和解などによって解決しなかった場合には、裁判所が当事者の主張や証拠などを踏まえて判決を言い渡します。
第一審の判決に不服がある当事者は、法律で定められた期間内に控訴することができます。
民事訴訟と刑事訴訟の違い
民事訴訟と刑事訴訟は、どちらも裁判所で行われる手続きですが、その目的や当事者は大きく異なります。
| 項目 | 民事訴訟 | 刑事訴訟 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 民事上の権利・義務をめぐる紛争を解決する | 犯罪の成否や刑罰について判断する |
| 主な当事者 | 原告と被告 | 検察官と被告人 |
| 代表的な事件 | 貸金、契約、損害賠償、明渡しなど | 窃盗、傷害、詐欺など |
| 主な結果 | 金銭の支払いや明渡しなどを命じる判決 | 有罪・無罪や刑罰などについての判決 |
一つの出来事から民事上の問題と刑事上の問題が同時に発生することもあります。
たとえば交通事故では、事故の内容によって刑事責任が問題となる一方、被害者に対する損害賠償については民事上の問題として扱われます。
民事訴訟で負けると逮捕される?
民事訴訟で敗訴したこと自体を理由として、逮捕されたり刑務所に入れられたりするわけではありません。
民事訴訟は犯罪に対して刑罰を科す刑事手続とは異なる制度です。
たとえば裁判所から「原告に100万円を支払え」という判決を受けたとしても、その判決自体は刑罰ではありません。
ただし、支払いを命じる確定判決などがあるにもかかわらず債務者が任意に支払わない場合、債権者が強制執行の手続きを行うことがあります。
民事訴訟と強制執行の違い
民事訴訟で勝訴したからといって、裁判所が自動的に相手の財産からお金を回収してくれるわけではありません。
相手が判決に従って任意に支払わない場合には、一定の要件のもと、債権者が強制執行を申し立てることがあります。
強制執行では、債務者の預貯金や給与、不動産などが対象となる場合があります。
つまり、民事訴訟と強制執行には次のような違いがあります。
民事訴訟は、権利や義務について裁判所の判断を得るための手続きです。
一方、強制執行は、判決などによって認められた権利を強制的に実現するための手続きです。
訴訟で勝つことと、実際に金銭などを回収することは必ずしも同じではない点が重要です。
民事訴訟以外にも解決方法がある
民事上のトラブルが発生しても、必ず民事訴訟を起こさなければならないわけではありません。
当事者同士による話し合いで解決するケースもあります。
また、裁判所で話し合いによる解決を目指す「民事調停」という制度もあります。
金銭の支払いを求める場合には「支払督促」を利用できるケースもあります。
さらに、簡易裁判所では、原則として60万円以下の金銭の支払いを求める訴えについて「少額訴訟」という手続きを利用できる場合があります。
どの手続きが適しているかは、トラブルの内容や請求額、相手方の対応などによって異なります。
民事訴訟はどこの裁判所で行われる?
民事訴訟は、事件の内容や訴額などによって地方裁判所や簡易裁判所などで扱われます。
一般的な民事訴訟では、訴額が140万円以下の請求については原則として簡易裁判所、140万円を超える請求については原則として地方裁判所が第一審を担当します。
ただし、事件の種類によって管轄に特別なルールが設けられている場合があります。
また、離婚などの家事事件については家庭裁判所が扱うなど、すべての民事上の問題が地方裁判所や簡易裁判所で扱われるわけではありません。
民事訴訟には費用がかかる
民事訴訟を起こす際には、裁判所に納める手数料が必要です。
手数料は原則として訴訟の目的の価額などに応じて決まります。
また、書類の送達などに必要となる費用もあります。
弁護士に依頼する場合には、裁判所に納める費用とは別に弁護士費用が必要になります。
なお、日本の民事訴訟では、原則として弁護士への依頼が必須というわけではありません。当事者本人が訴訟手続きを行う「本人訴訟」も可能です。
民事訴訟の判決に納得できない場合
第一審の判決に不服がある場合には、上級の裁判所に判断を求める「控訴」ができます。
民事訴訟では、原則として判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴しなければなりません。
さらに、控訴審の判決について法律上認められる場合には、上告などによって上級の裁判所に判断を求めることがあります。
ただし、上告ではどのような理由でも改めて審理してもらえるわけではなく、法律上の要件があります。
民事訴訟は身近なトラブルを法的に解決する制度
「訴訟」という言葉から大きな事件を想像することもありますが、民事訴訟は日常生活や企業活動に関係するさまざまな紛争を解決するために利用されています。
お金の貸し借り、契約代金、家賃、交通事故、不動産など、身近な問題が裁判に発展することもあります。
一方で、訴訟には時間や費用が必要になる場合があるため、話し合い、民事調停、支払督促、少額訴訟などを含め、紛争の内容に適した解決方法を検討することが重要です。
まとめ
民事訴訟とは、個人や企業などの間で発生した民事上の権利・義務をめぐる紛争について、裁判所に法的な判断を求める手続きです。
裁判を起こした側を原告、訴えられた側を被告と呼び、双方が主張や証拠を示しながら手続きを進めます。
犯罪の成否や刑罰を判断する刑事訴訟とは目的が異なり、民事訴訟で敗訴したこと自体によって刑罰を受けるわけではありません。
また、勝訴判決を得ても相手が任意に義務を履行しない場合には、強制執行が必要になることがあります。
民事上のトラブルを解決する方法は訴訟だけではありません。民事調停、支払督促、少額訴訟などの制度もあるため、それぞれの特徴を理解して適切な手続きを選択することが重要です。


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