大相撲の取組で、力士の間に立ち、軍配を持って勝負を裁く人物が「行司(ぎょうじ)」です。
行司は、取組の進行や勝敗の判定を担当するだけでなく、番付表の作成など、土俵の外でもさまざまな仕事を行っています。
また、行司にも階級があり、担当する取組や身に着ける装束は階級によって異なります。
この記事では、行司の意味や役割、階級、軍配の使い方、呼出との違いについて詳しく解説します。
行司とは?
行司とは、大相撲で取組の進行と勝敗の判定を担当する、日本相撲協会に所属する役職です。
土俵上では、力士の立ち合いを促したり、取組中に掛け声をかけたりしながら、勝負の行方を見守ります。
勝負が決まると、行司は勝ったと判断した力士の方向に軍配を向け、勝者を示します。
ただし、行司の判定が必ずしも最終決定になるわけではありません。勝負審判から物言いがついた場合には協議が行われ、判定が変更されることもあります。
行司の主な役割
行司の仕事は、土俵上での取組の進行と判定を中心に、土俵外の業務にも及びます。
取組を進行する
行司は、力士が土俵に上がってから勝負が決まるまで、取組の進行を担当します。
立ち合いでは両力士の呼吸を確認し、取組中は力士の動きや勝負の状況を見ながら、適切な位置に移動します。
行司自身が力士の動きを妨げないようにすることも重要です。
勝敗を判定する
取組が決着すると、行司は勝者の方向へ軍配を向けます。
力士の足が土俵の外に出た場合や、足の裏以外の身体の一部が先に土俵についた場合など、相撲の勝負規定に基づいて判定します。
ただし、勝敗には「死に体」などの判断が関係する場面もあり、単純に身体が先についたかどうかだけで決まるとは限りません。
掛け声をかける
行司は、取組中に独特の掛け声をかけます。
代表的な掛け声には、次のようなものがあります。
- はっけよい
- のこった、のこった
「はっけよい」は、動きが止まった力士に奮起を促す際などに使われます。
「のこった」は、勝負がまだ決まっていないことを示す掛け声です。
これらの掛け声は、取組の進行を支える役割を持っています。
番付表の作成などを担当する
行司は、土俵上の仕事以外にも日本相撲協会のさまざまな業務を担当します。
その代表例が、番付表の作成です。
大相撲の番付表は独特の相撲字で書かれており、行司がその作成を担っています。
このほか、場内放送などの業務に携わることもあります。
行司の階級とは?
行司には階級があり、上位になるほど番付の高い力士の取組を担当します。
主な階級は次のとおりです。
| 階級 | 概要 |
|---|---|
| 立行司 | 行司の最高位 |
| 三役格行司 | 三役格の行司 |
| 幕内格行司 | 幕内格の行司 |
| 十両格行司 | 十両格の行司 |
| 幕下格行司 | 幕下格の行司 |
| 三段目格行司 | 三段目格の行司 |
| 序二段格行司 | 序二段格の行司 |
| 序ノ口格行司 | 序ノ口格の行司 |
行司は経験を積みながら昇格していきます。
ただし、力士のように取組の勝敗によって番付が上下するわけではありません。
昇格にあたっては、経験や勤務状況、行司としての技能などが考慮されます。
立行司とは?
立行司(たてぎょうじ)は、行司の最高位にあたる階級です。
立行司には、次の2つの名跡があります。
- 木村庄之助(きむらしょうのすけ)
- 式守伊之助(しきもりいのすけ)
木村庄之助が行司の最高位の名跡であり、式守伊之助がこれに次ぎます。
これらは個人の本名ではなく、代々受け継がれる名跡です。
立行司は、横綱の取組など、大相撲の中でも重要な一番を担当します。
なお、名跡に空位が生じる場合もあるため、常に両方の立行司が在籍しているとは限りません。
行司が持つ軍配とは?
軍配(ぐんばい)は、行司が取組の勝敗を示すために使用する道具です。
取組が決着すると、行司は勝者と判断した力士の方向へ軍配を向けます。
軍配にはさまざまな形や装飾があり、行司によって使用するものが異なります。
また、軍配についている房の色は、行司の階級を見分ける手掛かりになります。
行司の装束と階級による違い
行司が土俵上で着用する衣装は「行司装束」と呼ばれます。
現在の行司装束は、直垂(ひたたれ)と烏帽子(えぼし)を基本としています。
江戸時代には裃(かみしも)を着用していましたが、1910年(明治43年)に現在につながる直垂と烏帽子の姿へ変更されました。
行司の階級は、軍配の房や装束の飾りひもの色、履物などによって見分けられます。
| 階級 | 房などの色 | 履物 |
|---|---|---|
| 木村庄之助 | 総紫 | 白足袋・草履 |
| 式守伊之助 | 紫白 | 白足袋・草履 |
| 三役格 | 朱色 | 白足袋・草履 |
| 幕内格 | 紅白 | 白足袋 |
| 十両格 | 青白 | 白足袋 |
| 幕下格以下 | 黒または青 | 裸足 |
このように、行司は階級によって装束の細部が異なります。
立行司が短刀を身に着ける理由
立行司は、腰に短刀を身に着けています。
これは、勝負を裁くことに対する責任と覚悟を象徴するものとされています。
ただし、判定を間違えた場合に実際に短刀を使用するという意味ではありません。
行司の判定が覆ることはある?
行司が勝者を示した後でも、判定が変更されることがあります。
その代表的な仕組みが「物言い」です。
物言いとは?
物言いとは、行司の判定に疑義がある場合などに、勝負審判が異議を申し立てることです。
物言いがつくと、勝負審判が土俵上で協議を行います。
協議の結果、主に次の3つの判断が下されます。
| 判断 | 意味 |
|---|---|
| 軍配どおり | 行司の判定を支持する |
| 軍配差し違え | 行司の判定を覆し、反対側の力士を勝者とする |
| 取り直し | 勝敗を決められない場合などに、もう一度取組を行う |
行司は協議の際に取組の状況を説明しますが、勝敗を決定する評決には加わりません。
軍配差し違えとは?
軍配差し違えとは、行司が示した勝者とは反対側の力士が勝者と判断されることです。
例えば、行司が東の力士に軍配を上げたものの、勝負審判の協議によって西の力士が勝者となった場合が該当します。
このように、大相撲では行司の判定に加えて、勝負審判による確認の仕組みが設けられています。
行司と呼出の違い
大相撲には、行司のほかに「呼出(よびだし)」と呼ばれる役職があります。
どちらも取組の進行に欠かせない存在ですが、担当する仕事は異なります。
| 項目 | 行司 | 呼出 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 取組の進行と勝敗の判定 | 力士の呼び上げや土俵の整備 |
| 取組前 | 立ち合いの進行など | 対戦する力士の四股名を呼び上げる |
| 取組中 | 軍配を持って勝負を裁く | 原則として土俵上で判定を行わない |
| その他の仕事 | 番付表の作成など | 土俵築や太鼓など |
取組前に独特の節回しで力士の四股名を呼び上げるのが呼出です。
一方、軍配を持って力士の間に立ち、勝負を裁くのが行司です。
行司と呼出は、それぞれ異なる役割を担いながら大相撲を支えています。
行司に関するよくある質問
行司は力士と同じ相撲部屋に所属している?
行司も力士と同様に相撲部屋に所属しています。
日本相撲協会の行司一覧には、各行司の名前や格付、所属部屋などが掲載されています。
行司は勝負を判定するだけの仕事?
行司は勝敗の判定だけでなく、取組の進行、番付表の作成、場内放送など、さまざまな業務を担当しています。
大相撲の運営を支える専門職の一つです。
行司が取組中に負傷した場合はどうなる?
行司が取組中に負傷するなどして職務を続けられなくなった場合には、控え行司が代行します。
日本相撲協会の審判規則では、土俵上の行司に事故があった場合、控え行司が代行することが定められています。
行司の名前に木村と式守が多いのはなぜ?
大相撲の行司には、木村家と式守家という伝統的な行司の家名があります。
行司は基本的に「木村」または「式守」を名乗り、経験や昇格などに伴って名前を改める場合もあります。
最高位の名跡である木村庄之助と式守伊之助も、この伝統に基づく名前です。
まとめ
行司とは、大相撲で取組の進行と勝敗の判定を担当する役職です。
軍配を持って勝負を裁く姿がよく知られていますが、番付表の作成など、土俵外でも重要な業務を担っています。
また、行司には階級があり、最高位は立行司です。階級によって担当する取組や装束、軍配の房の色などが異なります。
行司の判定に疑義がある場合には物言いがつき、勝負審判の協議によって判定が覆ることもあります。
大相撲を観戦する際には、力士の取組だけでなく、行司の掛け声や軍配の動き、装束の違いにも注目すると、相撲の伝統や競技の仕組みをより深く理解できるでしょう。


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