トルコアイスといえば、普通のアイスクリームとは違う「伸びる」「粘りがある」といった独特の食感で知られています。
日本では、店員が長い棒を使ってアイスを渡すふりをして引っ込める、ユニークな販売パフォーマンスを思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、なぜトルコアイスはあれほど伸びるのでしょうか。
この記事では、トルコアイスの特徴や原料、伸びる理由、トルコ語の「ドンドゥルマ」との関係などをわかりやすく解説します。
トルコアイスとは
トルコアイスとは、日本で主にトルコの伝統的なアイスクリームを指す際に使われる呼び方です。
トルコ語ではアイスクリームを「dondurma(ドンドゥルマ)」と呼びます。「トルコアイス」という名称がトルコでそのまま使われているわけではありません。
トルコの伝統的なドンドゥルマには、一般的なアイスクリームとは異なる強い粘りや弾力を持つものがあります。
特に有名なのが、トルコ南東部のカフラマンマラシュに由来する「マラシュ・ドンドゥルマ」です。
非常に弾力が強く、スプーンですくってすぐに溶けていく一般的なアイスクリームとは異なり、噛むようにして味わえるほどしっかりとした食感を持つものもあります。
トルコアイスはなぜ伸びる?
伝統的なトルコアイスの特徴的な粘りに深く関係しているのが「サーレップ(salep)」です。
サーレップは、特定のラン科植物の地下部にある塊茎を乾燥させ、粉末にしたものです。
サーレップには水分を吸収して粘りを生み出す成分が含まれているため、牛乳などと組み合わせることで独特の粘性や弾力を持ったアイスクリームになります。
さらに、製造工程で材料を練ったり攪拌したりすることで、一般的なアイスクリームとは異なる伸びのある食感が生み出されます。
つまり、トルコアイスが伸びるのは単純に「よく練っているから」だけではありません。原料と製法の組み合わせによって、独特の粘りと弾力が生まれています。
サーレップとは
サーレップはトルコをはじめ、中東や周辺地域で古くから利用されてきた食品原料です。
ラン科植物の塊茎から作られる粉末で、アイスクリームだけでなく温かい飲み物にも利用されています。
水分を含むと粘りが出るため、伝統的なドンドゥルマの特徴的な食感を生み出す重要な原料となっています。
一方、天然のサーレップの原料となる野生ランは資源保護上の問題があります。そのため、トルコ国外で販売されている「トルコアイス」やトルコアイス風の商品が、必ずしも伝統的なサーレップを使用しているとは限りません。
増粘剤や安定剤など、別の原料によって伸びる食感を再現している商品もあります。
マスティックが使われることもある
ドンドゥルマには「マスティック(mastic)」が使われる場合もあります。
マスティックは、マスティックノキから採取される天然樹脂です。独特の香りを持ち、ギリシャやトルコを含む東地中海地域などで食品に利用されてきました。
アイスクリームに使用すると、サーレップなどとともに特徴的な風味や食感を作る要素となります。
ただし、すべてのトルコのアイスクリームにサーレップやマスティックが同じように使われているわけではありません。地域や製品、製法によって原材料は異なります。
有名な「マラシュ・ドンドゥルマ」とは
トルコアイスを理解するうえで重要なのが「マラシュ・ドンドゥルマ」です。
「マラシュ」は、現在のトルコ南東部にあるカフラマンマラシュを指します。この地域は、独特の粘りと弾力を持つアイスクリームで知られています。
伝統的なマラシュ・ドンドゥルマでは、サーレップなどを利用して強い粘りを生み出します。
その食感は一般的なアイスクリームよりも密度が高く、伸びるだけでなく、しっかりとした弾力が感じられることが特徴です。
日本でイメージされる「伸びるトルコアイス」の代表的な存在といえるでしょう。
なぜトルコアイスは溶けにくく感じる?
トルコアイスは、一般的なアイスクリームよりも「溶けにくい」という印象を持たれることがあります。
これは、粘度が高く形を保ちやすいことなどが関係しています。
ただし、トルコアイスも氷菓・アイスクリームの一種である以上、温度が上がれば当然溶けます。
「まったく溶けないアイス」ではなく、特徴的な組成や粘りによって、一般的なアイスクリームより形が崩れにくく感じられるものがある、と考えるのが適切です。
トルコアイスのパフォーマンスとは
トルコアイスでもう一つ有名なのが、販売時のパフォーマンスです。
店員が長い金属製の棒を使ってアイスをコーンに盛り付け、客に渡そうとした瞬間に引っ込めたり、コーンだけを残したりします。
何度もアイスを取ろうとする客と店員のやり取りそのものをエンターテインメントとして楽しむスタイルです。
粘りの強いアイスが棒やコーンから簡単に落ちにくいという性質も、このようなパフォーマンスを可能にしています。
現在ではトルコの観光地だけでなく、日本を含む世界各地のイベントやトルコ料理店などでも見られることがあります。
普通のアイスクリームとの違い
一般的なアイスクリームとトルコの伝統的なドンドゥルマでは、食感に大きな違いがあります。
一般的なアイスクリームでは、なめらかさや口溶けの良さが重要な特徴です。
一方、サーレップを使った伝統的なドンドゥルマでは、粘りや弾力が強く、伸びたり噛み応えを感じたりすることがあります。
そのため、同じ冷たい乳製品を中心としたデザートでも、口に入れたときの感覚は大きく異なります。
日本の「トルコアイス」は本場と同じ?
日本でも「トルコアイス」や「トルコ風アイス」として、伸びるタイプのアイスが販売されることがあります。
ただし、日本で販売されている商品がすべて伝統的なトルコのドンドゥルマと同じ原料・製法で作られているわけではありません。
サーレップを使用せず、増粘剤や安定剤などによって粘りや伸びを再現している商品もあります。
そのため、「伸びるアイス=すべて伝統的なトルコのドンドゥルマ」と考えるのではなく、商品ごとに原材料や製法が異なると理解しておくとよいでしょう。
トルコアイスとドンドゥルマは同じ意味?
厳密には、完全に同じ意味として扱うと少し注意が必要です。
「dondurma」はトルコ語でアイスクリームを意味する一般的な言葉です。そのため、トルコで「ドンドゥルマ」といえば、必ずしも日本でイメージされるような極端に伸びるアイスだけを指すわけではありません。
一方、日本語の「トルコアイス」は、特に粘りが強く伸びるタイプのトルコ式アイスクリームを指して使われることが一般的です。
日本における「トルコアイス」と、トルコ語における「ドンドゥルマ」では、言葉が指す範囲に違いがある点には注意が必要です。
まとめ
トルコアイスは、強い粘りと弾力のある独特な食感で知られるトルコのアイスクリームです。
トルコ語ではアイスクリームを「ドンドゥルマ」と呼び、特にカフラマンマラシュの「マラシュ・ドンドゥルマ」が、伸びるタイプのアイスクリームとして有名です。
伝統的な製法では、ラン科植物の塊茎から作られるサーレップなどが特徴的な粘りを生み出す重要な役割を担っています。
また、長い棒を使ってアイスを渡したり引っ込めたりする販売パフォーマンスも広く知られ、トルコアイスの文化的な魅力の一つとなっています。
ただし、日本などで販売されている「トルコアイス」がすべて本場と同じ原料や製法で作られているわけではありません。
トルコアイスは、単に「伸びる面白いアイス」というだけではなく、地域の食文化や伝統的な原料・製法と結びついた特徴的なデザートなのです。


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