富裕層とは、多くの資産を保有し、経済的に豊かな状態にある人々を指す言葉です。
ニュースや経済記事では「富裕層が増加している」「富裕層向けサービスが拡大している」といった表現が使われますが、具体的にいくらの資産を持っていれば富裕層に該当するのでしょうか。
実は、富裕層には法律で定められた統一的な定義がありません。年収を基準とする場合もあれば、金融資産や不動産を含む総資産を基準とする場合もあります。
この記事では、富裕層の意味や資産額による分類、年収との違い、資産形成の方法についてわかりやすく解説します。
富裕層とは?
富裕層(ふゆうそう)とは、一般的に多額の資産を保有している人々を指します。
ただし、富裕層という言葉に明確な法律上の定義はなく、調査機関や金融機関によって分類基準が異なります。
例えば、金融資産を基準とする場合、預貯金や株式、債券、投資信託などの保有額が重要になります。
一方、不動産を含む総資産を基準とする場合には、自宅や投資用不動産なども評価対象になります。
そのため、富裕層に関する統計や調査を見る際には、どのような資産を対象としているのかを確認する必要があります。
日本における富裕層の定義
日本では、野村総合研究所(NRI)が公表している純金融資産保有額による世帯分類が、富裕層を説明する際によく用いられます。
この分類では、世帯が保有する純金融資産の金額に応じて、5つの階層に分けられています。
純金融資産による5つの階層
| 階層 | 純金融資産保有額 |
|---|---|
| 超富裕層 | 5億円以上 |
| 富裕層 | 1億円以上5億円未満 |
| 準富裕層 | 5,000万円以上1億円未満 |
| アッパーマス層 | 3,000万円以上5,000万円未満 |
| マス層 | 3,000万円未満 |
この分類では、純金融資産が1億円以上5億円未満の世帯を「富裕層」、5億円以上の世帯を「超富裕層」としています。
富裕層と超富裕層を合わせると、純金融資産1億円以上の世帯が対象になります。
ただし、この分類は野村総合研究所が調査・分析のために設定したものであり、国が法律によって定めた基準ではありません。
純金融資産とは?
純金融資産とは、保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた金額です。
基本的な計算式は次のとおりです。
純金融資産=金融資産-負債
金融資産には、主に次のようなものが含まれます。
- 現金・預貯金
- 株式
- 債券
- 投資信託
- その他の金融商品
一方、負債には住宅ローンやその他の借入金などが含まれます。
例えば、金融資産を1億5,000万円保有し、負債が3,000万円ある世帯の場合、純金融資産は1億2,000万円になります。
この場合、純金融資産1億円以上という基準を満たすため、野村総合研究所の分類では富裕層に該当します。
なお、この分類では自宅などの不動産そのものの評価額は金融資産に含まれません。
そのため、高額な不動産を保有していても、純金融資産が少なければ富裕層に分類されない場合があります。
富裕層と高所得者の違い
富裕層と高所得者は混同されやすい言葉ですが、両者は異なる概念です。
富裕層は保有している資産の多さに着目した分類であり、高所得者は一定期間に得られる所得の多さに着目した分類です。
| 比較項目 | 富裕層 | 高所得者 |
|---|---|---|
| 主な判断基準 | 保有資産 | 所得 |
| 対象となるもの | 預貯金・株式など | 給与所得・事業所得など |
| 評価の考え方 | ある時点の資産残高 | 一定期間の所得 |
| 統一的な定義 | なし | 用途によって異なる |
例えば、年収2,000万円の会社員であっても、金融資産が少なく、多額の住宅ローンを抱えている場合には、純金融資産を基準とする富裕層には該当しないことがあります。
反対に、退職して現在の年収が少ない人でも、預貯金や株式などを2億円保有していれば、富裕層に分類される可能性があります。
つまり、年収が高いことと資産を多く保有していることは、必ずしも一致しません。
富裕層の資産形成方法
富裕層が資産を形成する方法はさまざまです。
代表的な方法として、事業経営、給与所得からの貯蓄、投資、相続などが挙げられます。
1. 事業経営による資産形成
企業の経営者や創業者は、事業によって得た利益や保有株式の価値上昇などを通じて資産を形成する場合があります。
ただし、企業の株式を多く保有していても、その株式が非上場株式である場合などには、純金融資産の統計上の扱いを確認する必要があります。
また、事業には業績悪化や倒産などのリスクがあるため、経営者であることが必ずしも富裕層であることを意味するわけではありません。
2. 給与所得からの貯蓄
会社員や専門職などが、給与所得から継続的に貯蓄を行い、長期間かけて資産を形成する場合もあります。
所得が高くても支出が多ければ資産は増えにくく、反対に所得に対して支出を抑えることで資産を蓄積できる場合があります。
資産形成を考えるうえでは、収入だけでなく支出や負債の管理も重要です。
3. 株式や投資信託などへの投資
株式や投資信託などへの投資によって資産を形成する方法もあります。
投資では、配当金や分配金、資産価格の上昇による利益などを得られる可能性があります。
一方で、金融商品の価格は変動するため、投資した資金が減少するリスクもあります。
投資による資産形成は、必ず利益が得られるものではありません。
4. 相続や贈与による資産の取得
親族などからの相続や贈与によって、多額の資産を取得する場合もあります。
相続の対象には、現金や預貯金、株式、不動産などが含まれます。
ただし、相続や贈与では、取得する財産の内容や金額などによって税金が発生する場合があります。
また、不動産などを相続しても、その評価額がそのまま純金融資産に加算されるわけではありません。
富裕層と準富裕層の違い
野村総合研究所の分類では、純金融資産5,000万円以上1億円未満の世帯を準富裕層としています。
富裕層との違いは、純金融資産の保有額です。
- 準富裕層:5,000万円以上1億円未満
- 富裕層:1億円以上5億円未満
- 超富裕層:5億円以上
例えば、純金融資産が8,000万円の世帯は準富裕層に該当します。
その後、資産の増加などによって純金融資産が1億円に達した場合、富裕層に分類されます。
ただし、金融資産の価格変動や負債の増減によって純金融資産は変化するため、一度富裕層に分類されても、その状態が永続するとは限りません。
富裕層と資産家の違い
富裕層と似た言葉に「資産家」があります。
資産家とは、多くの財産を保有している人を指す一般的な表現です。
富裕層が経済的な階層を表す言葉として用いられるのに対し、資産家は個人が多くの財産を持っていることを表す場合によく使われます。
ただし、資産家にも法律上の統一的な資産額の基準はありません。
また、資産家という言葉では、金融資産だけでなく、不動産やその他の財産を含めて説明されることがあります。
富裕層に関する統計を見る際の注意点
富裕層に関する統計を比較する場合には、いくつかの注意点があります。
個人単位か世帯単位か
統計によって、個人を対象とする場合と世帯を対象とする場合があります。
例えば、夫婦がそれぞれ5,000万円の純金融資産を保有している場合、世帯全体では1億円になります。
世帯単位の分類では富裕層に該当しますが、個人単位で同じ基準を適用した場合には、それぞれの保有額は1億円未満です。
金融資産か総資産か
金融資産を基準とする統計と、不動産を含む総資産を基準とする統計では、対象となる資産の範囲が異なります。
例えば、高額な自宅を所有している世帯でも、金融資産が少なく住宅ローンが残っている場合、純金融資産を基準とした分類では富裕層に該当しない可能性があります。
調査時点による違い
金融資産の価値は、株価や為替相場などの変動によって変化します。
そのため、同じ世帯でも調査時点によって純金融資産の金額が変わり、分類される階層が異なる場合があります。
富裕層の世帯数や資産規模を比較する際には、調査年や調査方法も確認することが重要です。
まとめ
富裕層とは、多額の資産を保有する経済的に豊かな人々を指す言葉です。
日本では、野村総合研究所が公表している純金融資産保有額による分類が広く知られており、純金融資産1億円以上5億円未満を富裕層、5億円以上を超富裕層としています。
ただし、富裕層には法律上の統一的な定義がなく、金融資産を基準とするか、不動産を含む総資産を基準とするかによって対象者は異なります。
また、富裕層は保有資産に着目した概念であり、年収の高さを表す高所得者とは区別する必要があります。
富裕層について正しく理解するためには、資産額だけでなく、負債の有無、資産の種類、個人単位か世帯単位かといった分類条件を確認することが重要です。


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