「複利(ふくり)」は、元本だけでなく過去に得た利息にも利息がつく仕組みです。時間がたつほど増え方が加速するのが最大の特徴で、「利息が利息を生む」ため、早く・長く・コスト低くが鍵になります。
1. 定義と基本式
- 将来価値(FV)= 元本(PV)× (1 + 利率 r)^期間 n
- 例:10万円を年5%で10年
→ 10万円 × 1.05^10 ≒ 162,889円(単利なら15万円)
単利:利息は常に「元本」に対してのみ
複利:元本+利息に対して利息がつく
2. 直感的にわかる「72の法則」
おおよそ 72 ÷ 年利(%) ≒ 元本が2倍になる年数 の目安。
- 年2% → 約36年
- 年3% → 約24年
- 年5% → 約14.4年
- 年7% → 約10.3年
※厳密な値ではありませんが、増え方の感覚を掴むのに便利です。
3. 単発投資の増え方(比較)
元本10万円を複利で運用した場合:
- 年3%
- 10年:134,392円
- 20年:180,611円
- 30年:242,726円
- 年5%
- 10年:162,889円
- 20年:2,653,298円(元本を100万円にしたときの参考値)
- 30年:432,194円(元本10万円のまま)
- 年7%
- 10年:196,715円
- 20年:386,968円
- 30年:761,226円
※四捨五入、小数点以下切捨て。計算条件は本文中(年複利、税・手数料考慮なし)。
4. 積立×複利はさらに強力(毎月1万円の例)
毎月1万円を積み立て、年複利・税コスト等は考慮しない単純計算:
- 年3%
- 20年:約328万円
- 30年:約583万円
- 年5%
- 20年:約411万円
- 30年:約832万円
- 年7%
- 20年:約521万円
- 30年:約1,220万円
ポイント:拠出額が時間をかけて“複利にさらされる”ので、元本を一括で入れる場合よりも「時間」の効果を広く使えます。
5. 複利の「回数」が結果を変える
同じ年利でも、複利の頻度(年1回/毎月/毎日)が多いほど有利です。
例:100万円を年5%で20年
- 年1回複利:約265.3万円
- 毎月複利:約271.3万円
- 毎日複利:約271.8万円
差は大きくないように見えて、長期・高額になるほど効いてきます。
6. 実質利回りで考える(インフレ・手数料・税金)
名目5%、インフレ2%なら実質約2.94%
→ (1 + 0.05) / (1 + 0.02) − 1 ≒ 0.0294
さらに運用コスト(信託報酬など)や税金が複利の逆風になります。
参考:100万円を30年、
- 5%複利:約432万円
- 4%複利(=年1%分コスト等で目減り):約324万円
差は約108万円。年1%の差が長期では非常に大きくなります。
7. 借り入れにも働く“負の複利”
クレジットのリボ払い・高金利の借金は、返済が遅れるほど利息が利息を呼ぶため、負担が雪だるま式に増えます。
複利の力は「味方」にも「敵」にもなることを忘れないでください。
8. よくある誤解と落とし穴
- 短期で劇的な成果を期待しすぎる
→ 複利は主に「時間」が育てます。数年では差が小さく見えることも。 - マイナス局面を無視する
→ 実際の相場は上下します。下落時の拠出停止や狼狽売りは複利の機会を削ります。 - コスト・税を軽視する
→ 年0.数%でも、長期では大差に。低コストの継続が王道。
9. きょうから実践できるチェックリスト
- 金額は小さくても今すぐ始める
- 毎月の自動積立で継続(市場の上下に“平均”で向き合う)
- コストの低い商品を選ぶ(信託報酬・手数料)
- 長期前提で途中の値動きに左右されないルールづくり
- 必要に応じてリバランス(資産配分を維持)
10. まとめ
- 複利は「利息が利息を生む」仕組み。時間が味方。
- 積立×長期×低コストが最も効率的に複利を活かす王道。
- 借金側では逆に働くため、高金利負債は優先して圧縮を。
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