SDGs(エス・ディー・ジーズ)は、2030年までに世界が達成を目指す17の目標と169のターゲット。この記事ではSDGsの基本、17目標の要点、日本の組織が取り組む際の進め方(マテリアリティ設定・KPI設計・情報公開)までを、実務視点で整理します。
SDGsの基本
- 正式名称:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)
- 採択:2015年 国連サミット
- 目標年:2030年
- スローガン:「誰一人取り残さない(Leave No One Behind)」
- 特徴:経済・社会・環境を統合的に扱い、国や企業・自治体、市民が協働して取り組む枠組み。
17の目標(概要)
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
17目標は相互に関連します。たとえば「12.つくる責任」は「13.気候変動」や「14/15.生態系保全」に直結し、サプライチェーン全体の見直しが求められます。
企業・自治体・学校での取り組み手順(実務フロー)
1) 重要課題(マテリアリティ)を特定
- 事業・地域に本質的な影響領域を洗い出し、優先度マトリクスで絞り込み。
- 例:製造業なら「エネルギー効率」「安全衛生」「サプライヤー管理」、自治体なら「防災・減災」「高齢者支援」「教育格差」など。
2) KPIを設計(測れる目標に)
- 定量化(%・件数・削減量・導入率など)
- 期限と基準年を明記
- 例:
- 電力使用量原単位を2027年までに15%削減(基準年2023)
- 女性管理職比率20%を2028年までに達成
- リサイクル率を2026年までに80%へ
3) 体制・ガバナンス
- 経営層コミットメント、推進委員会、部署横断のワーキンググループを設置。
- 調達方針・人権方針・情報セキュリティ方針などポリシー整備。
4) 開示・コミュニケーション
- ウェブサイト・レポートで目標/実績/課題を公開。
- ステークホルダー(従業員・顧客・地域・投資家)との対話を定期化。
- 国際基準(GRI、TCFD、SASB など)への整合も検討。
分野別の実践アイデア(すぐ始められる例)
環境(E)
- 再エネ電力の導入、設備の高効率化、社用車のEV化
- 廃棄物の分別徹底・食品ロス削減、再生材・FSC紙の採用
- サプライヤーのCO₂排出把握(スコープ3の見える化)
社会(S)
- 働き方の柔軟化(在宅・時差・短時間)、有給取得率向上
- ダイバーシティ施策(採用・登用・研修・ハラスメント防止)
- 地域連携(防災協定、子ども食堂支援、学校連携授業)
ガバナンス(G)
- 取締役会の監督機能強化、内部通報制度の実効性向上
- 個人情報・セキュリティ対策の年次監査
- 調達ガイドライン(人権・環境・品質)と監査プロセス
中小企業・学校・自治体向け:費用を抑えた進め方
- まずは見える化:電力・紙・燃料・出張の実績収集(表計算でOK)
- 小さく試す:1拠点・1製品ライン・1学年などからパイロット実施
- 既存施策をSDGsに紐づけ:すでに実施中の安全衛生や防災訓練、節電も立派な取り組み
- 助成金・共同事業:自治体や商工会議所の支援制度を活用
- パートナーシップ:地域団体・NPO・他校・他社と連携して費用と効果をシェア
よくある課題と回避策
- 課題:スローガンで終わる
- 対策:KPIを年次で更新し、未達の理由と次手を公開
- 課題:担当者に負担が集中
- 対策:各部門にKPIを割り当て、評価制度に反映
- 課題:コスト先行
- 対策:省エネ・省資源の回収期間を見積もり、投資計画化
- 課題:サプライチェーンが見えない
- 対策:主要仕入先から段階的にアンケート・監査を開始
取り組みチェックリスト(保存用)
- [ ] 重要課題(マテリアリティ)を3〜8件に特定
- [ ] KPI:数値・期限・基準年を設定
- [ ] 方針文書(人権・調達・情報セキュリティ等)を整備
- [ ] 年次の実績レビュー&外部発信
- [ ] 主要サプライヤーの調査を開始
- [ ] 研修・社内周知・地域との連携を実施
まとめ
SDGsは「環境だけ」でも「慈善だけ」でもありません。本業の競争力を高める経営・地域づくりの設計図です。自組織にとって重要な課題を絞り、測れるKPIで運用し、率直に開示する――この基本サイクルを回すことが、2030年に向けた最短ルートになります。


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