ISBN(International Standard Book Number)は、書籍を世界共通で一意に識別する13桁の番号です。構成要素、チェック数字の計算、ハイフンの付け方、バーコードとの関係、取得方法(日本ISBN事務局)まで、実務で役立つポイントをまとめます。
はじめに
本を流通させるなら、ISBNはほぼ必須の基盤情報です。書店・取次・図書館・ECの在庫・検索・請求がISBNでつながります。本記事では、出版社・個人出版のどちらにも役立つ実務目線で解説します。
ISBNの基本
- 正式名称:International Standard Book Number
- 現行形式:ISBN-13(13桁)
- 旧形式:ISBN-10(10桁)※現行は付随的に用いられることが多い
- 用途:流通・発注・在庫管理、図書館管理、データベース検索
ISBN-13の一般例
978-4-06-517590-1
左から順に
- プレフィックス(978/979)
- 登録グループ(言語・地域。日本は「4」)
- 出版社記号
- 書名記号
- チェック数字(誤り検出)
※ 出版社規模などにより「出版社記号」と「書名記号」の桁数は可変です。
構成の意味とハイフンのルール
ハイフンは読みやすさのための区切りで、桁の意味を明示します。どこで区切るかは、管理機関が付与した出版社記号の長さで決まります。
- 同じ出版社でも、タイトル(版・判・装丁)が異なると書名記号が替わり、別のISBNになります。
チェック数字の仕組み
ISBN-13(推奨)
12桁に交互に 1 と 3 の重みを掛けて合計し、下記で求めます。
チェック数字 = (10 - (合計 % 10)) % 10
例:978030640615?
計算(1,3,1,3…の重み)合計=93 → 93%10=3 → 10-3=7
→ 9780306406157 が正しいISBN。
ISBN-10(参考)
重み10〜2を掛けて合計し、
チェック数字 = 11 - (合計 % 11)
10は「X」、11は「0」と表記します。
バーコード(JAN/EAN-13)との関係
- 書籍のバーコードは EAN-13(日本語ではJANコード) で、ISBN-13の数字(ハイフン無し) と一致します(先頭は 978/979)。
- 右側に5桁のアドオン(EAN-5)を付け、価格情報を載せる場合があります。
いつ新しいISBNが必要?
次のようなケースは新しいISBNを付けます。
- 版の更新(改訂版・新版)
- 判型や装丁違い(単行本版/文庫版、ハードカバー/ソフトカバー等)
- 電子書籍版(EPUB、PDFなど)やオーディオブック(管理方針次第)
- セット商品をバラす/新たにセット化する場合
一方で、増刷(同一版の再印刷)は通常、ISBNはそのままです。
取得方法(日本の場合)
- 管理機関:日本ISBN事務局
- 申請主体:出版社(個人出版も可)
- 流れの目安
- 出版社記号の申請・付与
- 作品ごとに書名記号を採番
- ISBN-13を確定(チェック数字を計算)
- 奥付・カバー・バーコードへ反映、書誌データ登録
※ 取引先(取次やオンライン書店)の要件に合わせ、バーコード(EAN-13+必要に応じてEAN-5)の生成・入稿形式も事前確認しましょう。
実務で役立つチェックリスト
- [ ] 版・判・装丁・電子でISBNは分けたか
- [ ] ハイフン区切りは出版社記号に合わせているか
- [ ] チェック数字を計算・検証したか
- [ ] 奥付・カバー・帯・販促物・書誌データが同一表記か
- [ ] バーコードの入稿仕様(解像度・余白・発色)を満たすか
よくある質問(FAQ)
Q1. ISBN-10しか手元にないが、ISBN-13にできますか?
A. 通常は先頭に「978」を付け、残りを再計算してISBN-13を作ります(厳密には“変換”というより“対応付け”)。管理・流通はISBN-13を使用するのが基本です。
Q2. 同じ内容のオンデマンド印刷(POD)は別ISBN?
A. 印刷方式の違いだけなら同一ISBNで扱う場合もありますが、書店・流通の取り扱い方針により異なります。装丁・判型・コンテンツ差があれば別ISBNを付与しましょう。
Q3. 電子書籍のフォーマット違い(EPUB/PDF)でISBNは分ける?
A. 実務では版の識別が必要かで判断されます。ストア側管理とカタログ要件を確認し、明確に識別したい場合は分ける方が安全です。
Q4. ハイフン位置はどこを見ればいい?
A. 出版社記号の桁数で決まります。出版社記号は管理機関から付与されるため、自社(自分)の出版社記号に合わせたルールで区切ってください。
失敗しないための実務Tips
- 最初に版管理ルールを決める(版/刷、判型、装丁、電子の扱い)
- 書誌データを一元管理(ISBN、Cコード、ページ数、発売日、価格、在庫)
- 校了前にISBNとバーコードを確定し、装丁・奥付の差し替えを防ぐ
- EC・取次・図書館向けに同一のメタデータを配信
まとめ
ISBNは「書籍のID」であり、流通・検索・管理のインフラです。
- 現行はISBN-13が標準
- 版・判・装丁・電子が変われば新しいISBN
- ハイフン位置は出版社記号で決まる
- バーコード(EAN-13)はISBN-13と一致
この基本を押さえれば、制作から販売までのトラブルを大きく減らせます。

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