要点まとめ
- 羅針盤は地球の磁場を利用して磁北を示す測定器。
- 地図と組み合わせて使うと、進行方位の決定や現在地の把握が正確・迅速にできる。
- 主な種類は磁気式(プレート型/レンザティック型)、ジャイロコンパス(船舶)、電子コンパス(スマホ等)。
- 実用のカギは磁偏差の扱いと金属・磁気の影響排除、そして平水平保持。
1. 羅針盤の基本
羅針盤(らしんばん/方位磁針)は、磁化された針が地球磁場に沿って回転し、主に北(磁北)の方向を示す道具です。文字盤には方位(N/E/S/W)や度数(0〜360°)が刻まれ、方位を数値で読むことができます。比喩では「進むべき方向を示す指針」という意味でも使われます。
磁北と真北
地図が基準とする真北(地理的北)と、羅針盤が指す磁北は一致しません。このズレを磁偏差と呼び、地域ごとに値が異なります。実務では、地図上で進むべき真方位に磁偏差を加減して、磁方位(羅針盤読み)に変換します。
2. しくみの超要約
- 磁化された針(赤側が北を指す)が回転自由に保たれる
- 針は地球磁場の水平成分と一致しようとする
- 盤の0°=Nを基準に、E=90°、S=180°、W=270°を読む
3. 主な種類と特徴
磁気式(アナログ)
- プレート型:透明ベース、地図合わせがしやすい。登山・オリエンテーリング定番。
- レンザティック(軍用型):目盛を覗きながら精密照準。直線方位の読み取りに強い。
- 液体充填:針の振れが速く収束。寒冷地での粘度変化に注意。
ジャイロコンパス
- 地球の自転を利用し真北を指す。船舶等の航海計器。磁気の影響を受けにくい。
電子コンパス
- スマホやGPS機器に内蔵。地磁気センサー+補正アルゴリズムで表示。
- キャリブレーション(8の字)や金属干渉の管理が必要。アプリでログ・共有が容易。
4. 基本の使い方(プレート型)
- 水平に持つ:胸の前で平らに。金属や磁石から距離を取る。
- 北合わせ:針の赤を盤のNに重ねる(=磁北を基準化)。
- 方位を読む:目標物の方向にベースプレートの矢印を向け、度数を確認。
- 地図と整置:地図上の経線(北向き格子)にコンパスの縁を合わせ、地図自体も北向きに回す。
- 磁偏差を補正:地域の磁偏差分を加減して、真方位/磁方位を変換。
ヒント:
- 目標物が見えない場合は、手前の目印(樹木・岩など)を中継点にして段階的に進むとブレにくい。
- 斜面では体ごと傾きやすいので、器械は水平を守る。
5. よくある誤差と対処
- 金属干渉:車・鉄柵・高圧線・大型スピーカー・磁気留め具などから離れる。
- 電子機器の影響:スマホ・モバイルバッテリーと密着させない。
- キャリブレーション不足(電子):アプリの指示に従い再校正。
- 高緯度の磁気傾斜:針が盤に擦る場合も。地域向けモデルや針の傾斜補正機構が有効。
- 読み取り角度(パララックス):真上から読む。影響を避けるため同一姿勢を保つ。
6. 登山用に「良いコンパス」を選ぶポイント
- 回転ベゼルの目盛:2°または5°刻み、視認性の高い印刷。
- 針の安定性:液体充填+適度な減衰。寒冷地の粘度変化の評判を確認。
- ルーペ・スケール:1:25,000、1:50,000など地図尺スケール付きが便利。
- 方向指示(矢印)と直線縁:方位線引きや読図がしやすい。
- 傾斜補正機構:遠征や高緯度エリアを想定するなら検討。
- ナイト用目印:暗所で見える蓄光インデックスが安全。
7. 地図読みワークフロー(実践例)
- 目的地を地図で確認し、真方位を量る。
- 磁偏差を反映して磁方位へ変換。
- コンパスのベースプレートを進行方向に向け、指定の角度で北合わせ。
- 中継点を取りながら、等高線と地形で常時クロスチェック。
- 進行中は水平保持・干渉回避・定期的な再読みを徹底。
8. メンテナンス
- 強磁性体に近づけ保管しない(着磁・脱磁の偏り防止)。
- 高温直射日光や極低温は液漏れ・粘度変化の原因に。
- 年に一度は動作確認と気泡チェック。異常があれば交換を検討。
9. よくある質問(FAQ)
Q1. スマホだけで十分?
行動ログや共有は便利ですが、電池切れ・破損に備え、アナログの予備を携行するのが安全です。
Q2. 磁偏差はいつも同じ?
長期的に変化します。最新の地形図・公的資料を確認し、定期的に見直すのが確実です。
Q3. コンパスの“北固定”設定は必要?
一部モデルやアプリには磁偏差の事前設定機能があります。常用域が決まっているなら手間が減ります。
10. 用語ミニ辞典
- 磁北(しほく):羅針盤の針が向く北。
- 真北:地理的な北極方向。地図の基準。
- 磁偏差:磁北と真北の角度差。
- 磁方位/真方位:磁偏差を考慮した“読み”の区別。
- 整置:地図を実際の北と合わせる操作。

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