大晦日の夜、静かな鐘の音が響く――。
日本の年末を象徴する風景のひとつが「除夜の鐘(じょやのかね)」です。
毎年なんとなく耳にしているものの、「なぜ鐘を鳴らすのか」「なぜ108回なのか」を詳しく知っている人は意外と少ないかもしれません。
この記事では、除夜の鐘の意味・由来・108回の理由について、初めての方にもわかりやすく解説します。
除夜の鐘とは?
除夜の鐘とは、大晦日の夜から元日にかけて、寺院で撞(つ)かれる鐘のことです。
一般的には、12月31日の深夜に始まり、年が明ける前後にかけて鐘が鳴らされます。
「除夜」とは、
- 旧年を除き去る夜
という意味を持つ言葉で、年の終わりを表します。
つまり除夜の鐘は、
一年の終わりに鳴らされ、新しい年を迎えるための鐘
という位置づけになります。
なぜ除夜の鐘は108回鳴らされるのか
除夜の鐘が108回鳴らされる理由は、仏教の教えに基づいています。
仏教では、人間には
108の煩悩(ぼんのう)
があると考えられています。
煩悩とは、
- 欲望
- 怒り
- 嫉妬
- 執着
など、人の心を乱し苦しみの原因となる感情や迷いのことです。
鐘を1回鳴らすごとに煩悩を1つずつ払い、
108回すべて鳴り終わることで、煩悩を清めて新年を迎える
という意味が込められています。
108の煩悩の数え方には諸説ある
108という数の数え方には、いくつかの説があります。
代表的なものは以下です。
- 六根(眼・耳・鼻・舌・身・意)
- × 六境(色・声・香・味・触・法)
- × 三受(苦・楽・不苦不楽)
- × 二(浄・不浄)
これを掛け合わせると
6 × 6 × 3 × 2 = 216
となりますが、これを善悪で半分にした数が108とされます。
いずれの説でも共通しているのは、
人間のあらゆる迷いを象徴する数が108
という考え方です。
除夜の鐘はいつ鳴らされる?
多くの寺院では、次のような流れで行われます。
- 23時頃から鐘を撞き始める
- 年が明ける前に107回
- 年が明けてから最後の1回
これは、
- 旧年の煩悩を年内に払い
- 新年の最初の鐘で心を新たにする
という意味合いを持っています。
ただし、寺院によっては時間帯や回数の区切り方が異なる場合もあります。
一般の人も鐘を撞けるの?
近年では、一般参拝者が除夜の鐘を撞ける寺院も増えています。
- 整理券を配布する
- 先着順で参加できる
- 家族連れや子ども向けの時間帯を設ける
など、地域に開かれた行事として行われることも多くなりました。
一方で、安全面や近隣への配慮から、
- 関係者のみ
- 時間短縮
- 中止
となる寺院もあるため、事前の確認が必要です。
除夜の鐘が持つ意味
除夜の鐘には、単なる年末行事以上の意味があります。
- 一年を振り返るきっかけ
- 心を落ち着かせる時間
- 新しい年への区切り
忙しい日常の中で、鐘の音を聞くひとときは、
自分の心と向き合う静かな時間とも言えるでしょう。
まとめ|除夜の鐘は心を整えて新年を迎えるための儀式
除夜の鐘は、
- 大晦日の夜に鳴らされる鐘
- 108の煩悩を払うための仏教行事
- 新年を清らかな心で迎えるための儀式
という意味を持っています。
年末に鐘の音を耳にしたときは、
「一年の迷いや疲れを手放し、新しい年を迎える合図」
として、静かに聞いてみるのもよいかもしれません。

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