意味
二枚舌(にまいじた)とは、状況や相手によって言うことを変えたり、表向きの発言と裏での言動が食い違ったりすることを指す言葉です。平たく言えば「場当たり的に都合よく口先を変えること」。個人だけでなく、組織や政治のコミュニケーションでも使われます。
由来と背景
「舌」を言葉・発言の象徴と捉え、舌が二枚ある=二通りの言い方を使い分ける比喩から生まれました。日本語では古くから“口”を誠実さの尺度にする表現(口先だけ/口が軽い 等)が多く、その延長にある語感です。
類義語・関連語
- 類義語:ご都合主義、掌返し、二重基準、偽善、欺瞞
- 近い概念:建前と本音(社会的役割に応じた“使い分け”。悪意が必ずしもあるわけではない)
- 対義語:一枚岩(一致結束)、誠実、率直、整合性
英語表現
- double-tongued / two-faced(人に対して)
- speaks out of both sides of one’s mouth(発言が矛盾)
- flip-flop(主張の手のひら返し:主に政治・政策文脈)
具体例(使い方)
- 「会議ではコスト重視と言いながら、取引先には品質最優先と伝えるのは二枚舌だ。」
- 「トップのメッセージと現場の指示が逆。社外から二枚舌の会社と思われかねない。」
なぜ起こるのか(心理・組織の要因)
- その場しのぎの合意形成/衝突回避
- 利害関係者ごとの“受け”を狙った発信最適化
- 目標と現実のギャップを埋めるための方便
- 情報共有・意思決定プロセスの不備(縦割り、ガバナンス欠如)
リスクと悪影響
- 信用失墜(顧客・従業員・投資家の信頼低下)
- 組織内の士気低下・離職増
- 交渉力の低下(言質が信用されない)
- レピュテーションリスク拡大(SNS時代は矛盾が可視化されやすい)
見抜き方チェックリスト
- 一貫性:発言と行動、資料と実態、時系列で矛盾がないか。
- 条件付き表現:常に「場合によっては」「検討中」で逃げていないか。
- 責任の所在:誰が最終決定者か曖昧ではないか。
- 公式記録:口頭と文書(プレスリリース・議事録)が整合しているか。
- 利害者ごとの差分:相手によってメッセージが大きく変わっていないか。
対処法(個人・チーム)
- 言質を文書化:メール・議事録で“決定事項/理由/期限/責任者”を明記。
- 原則の言語化:優先順位(例:安全>品質>コスト)を先に共有し、判断の軸を固定。
- 発信統制:広報・営業・開発などのメッセージを一本化。更新履歴を管理。
- 反証可能性:発言前に「どのデータで裏付けるか」を用意。
- 勇気ある訂正:矛盾が露見したら、早期に理由と再発防止を公表する。
使い分けと“二枚舌”の境界
- OKな使い分け:専門家向け・一般向けで表現の難易度を変える(内容は同じ)。
- NGな二枚舌:ステークホルダーごとに判断基準や結論を変える(実体が異なる)。
まとめ
二枚舌は短期的には都合がよく見えても、長期的には信用コストが雪だるま式に増えます。
発言と行動の一貫性・検証可能性・記録性を意識することで、不要な疑念を避け、関係者との信頼資本を積み上げられます。ビジネスでも日常でも、“言葉の整合性”こそが最大のリスク対策です。


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