狛猿(こまさる)とは?

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日本の神社などで、比較的珍しい「守りの像」として設けられているのが“狛猿”です。一般に神社入口や拝殿の左右に配置される“狛犬(こまいぬ)”の変形版とも言える存在ですが、猿を用いた点に特異性があります。以下、由来・意味・見どころ・巡る際のポイントを整理してみます。


1. 名前の由来・見た目

  • 「狛猿(こまさる)」という呼び名について、資料には「狛犬(こまいぬ)+猿」から転じたものという説明があります。
  • また、“まさる(勝る/魔が去る)”という語呂合わせから、「まさる=猿」という読みをかけて縁起を担ぐ説もあります。
  • 見た目としては、対になって設置されていることが多く、片方が口を開け(“阿形”)、もう片方が口を閉じている(“吽形”)とされる形も確認されています。

2. 起源・信仰背景

  • 特に有名なのが、 日枝神社(東京都千代田区)やその系列神社・分霊社で、そこでは猿が神の使い(「神猿(まさる)」)とされてきました。
  • 例えば、猿は山の神として信仰されてきた 日吉大社 の御祭神 大山咋神 の神使とも考えられ、その影響を受けた神社で猿像が守護・象徴として用いられています。
  • また、「魔が去る」「勝る」という語呂から、”悪・災難を退ける”、あるいは”勝運・良縁を得る”という願いが込められているとされています。

3. ご利益・象徴される意味

狛猿が象徴するご利益や意味合いとして、次のようなものが挙げられます。

  • 災難除け、魔除け:前述の「魔が去る(まさる)」の語呂に因む。
  • 勝運・商売繁盛:”勝る”の語呂から、特に右側(あるいは雄の猿)を撫でると良いとされる神社も。
  • 家内安全・子宝・安産:母猿・子猿を抱いた姿などが設けられている神社もあり、子授け・安産の願いを託されることもあります。
  • 良縁・縁結び:「猿(えん)」の語呂替えで縁起の良い縁を結ぶという観点から。

4. 実際に見られる神社・スポット

  • 日枝神社(東京都千代田区):本殿前に夫婦の神猿像が置かれていて、母猿(子供を抱く)と父猿(雄)がそれぞれ家内安全・安産/商売繁昌・良縁の象徴とされています。
  • 新日吉神宮(京都府):境内に「狛猿」とされる一対の猿像があり、通常の狛犬ではなく猿が守護として据えられている例です。
  • 鳴谷神社(三重県いなべ市):参道で「狛猿」が迎えてくれる、全国的にも珍しいスタイルの神社として紹介されています。

5. なぜ「狛犬」ではなく「猿」なのか?

  • 神社によっては動物(神使)を社頭の守護像として設けるところがあり、必ずしも狛犬だけが用いられるわけではありません。たとえば狐(稲荷社)、鹿(春日社)などの例もあります。狛猿もその一例と考えられます。
  • 上述のように、特定神社(山王系・日吉系)では猿が神使として伝承されており、その由来から「猿」が社頭守護として据えられた可能性が高いです。
  • また、語呂・縁起の良さから猿を採用することで、信仰・参拝者にとって身近なモチーフになっているとも言えます。

6. 参拝・巡る際のポイント

  • 拝殿正面に向かって、左右対称に猿像が配置されているかに注目してみましょう。例えば、口を開いている/閉じているの対比がある場合も。
  • 猿像を撫でられる神社では、それぞれが「母猿」「父猿」など意味分けされていることがあります。目的に応じて撫でる像を選ぶと良いでしょう。例えば、安産・子宝なら母猿を、商売・勝運なら父猿を。
  • 神社の由緒や由来を確認すると、なぜ猿が使われているか背景が見えてきます。例えば、その神社が「山王信仰」「日吉系」であるかどうか。
  • 写真撮影・SNS掲載などを考えている場合、猿像が比較的珍しいタイプなので、神社訪問の記録として貴重なものになるでしょう。

7. まとめ

“狛猿”は、神社の門前・拝殿前に設置される守護像としての「猿」のバージョンで、従来の狛犬スタイルを猿モチーフに置き換えた、あるいは猿を優先的に据えたものです。
猿=「まさる」「魔が去る」「勝る」などの語呂合わせや、山系の神社で猿が神使として扱われてきた信仰背景が、その存在を可能にしています。参拝時には、ただ通り過ぎるだけでなく「なぜここに猿がいるのか?」を意識すると、より深く神社・信仰に触れられます。

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