おざなり(御座なり)
その場かぎりで、いいかげんに物事をする様子。
本気ではなく、形だけ取り繕って行うこと。
もう少しくだけた言い方をすると、
- 「とりあえずやっておけばいいや」
- 「形だけ整えておけばいいだろう」
という気持ちが透けて見えるやり方を指します。
日常でのイメージ
- 宿題の感想文を、数行だけ適当に埋めて終わらせる
- 会議の議事録を、要点も書かずに形式だけ真似て作る
- 接客で心のこもらない定型文だけを投げかける
こうした状態を、「おざなりな対応」「おざなりな仕事」と表現します。
「おざなり」の語源
「おざなり」は、江戸時代の芸者の世界で使われていた言葉が由来と言われます。
- 客へのもてなしが丁寧でない
- その場だけ取り繕うような、手抜きのもてなし
このような意味で使われたのが広まり、
今では一般的に「その場しのぎ」「いいかげん」という意味で使われています。
おざなりの例文
ニュアンスをつかむために、いくつか例文を見てみましょう。
- 例1:
形だけ謝っただけで、対応も改善されないので、すごくおざなりな謝罪に感じた。
- 例2:
新人研修があまりにもおざなりで、現場に出てから苦労した。
- 例3:
おざなりな説明では、相手に本気度が伝わらない。
- 例4:
忙しいのは分かるが、顧客対応をおざなりにしてはいけない。
いずれも「気持ちや中身が伴っていない」イメージが共通しています。
ややこしい「なおざり」との違い
「おざなり」とセットで語られるのが 「なおざり」 です。
意味が似ているようで違うので、ここで整理しておきましょう。
なおざりの意味
なおざり(等閑)
いいかげんにして、ほとんど放っておくこと。
やるべきことを、きちんと扱わずに放置する様子。
つまり、
- 「やらなきゃいけないことは分かっているのに、ほぼ放置」
- 「必要な配慮や手間をかけず、ほぼほったらかし」
という状態を指します。
おざなりと なおざり の違い
ざっくり言うと、次のように整理できます。
| おざなり | なおざり | |
|---|---|---|
| 行動 | 一応「やる」 | ほとんど「やらない」「放っておく」 |
| 中身 | いいかげん・形だけ | そもそもちゃんと取り組まない |
| イメージ | その場しのぎ | 放置・おろそか |
よく出る説明としては、
- おざなり:とりあえずやるが、雑・形だけ
- なおざり:ちゃんと向き合わず、放置に近い
という対比です。
例文で比べてみる
- おざなりな説明
→ 一応説明はするが、内容が雑・形だけ - なおざりな説明
→ 説明すべきことをほとんど伝えていない、重要な点を放置している
このように、「やってはいるけれど雑」なのが「おざなり」、「やるべきこと自体がおろそか」なのが「なおざり」というイメージで押さえておくと混同しにくくなります。
ビジネスシーンでの「おざなり」
ビジネスでは、「おざなり」は特に注意したい言葉です。
よく使われる場面としては、次のようなものがあります。
- おざなりな会議運営
→ 議題が曖昧、結論も決まらず、ただ集まるだけ - おざなりなクレーム対応
→ 定型文で謝るだけで、原因究明や改善策が伴わない - おざなりな報告書
→ データだけ貼り付けて分析や考察が抜けている
どれも、「相手や成果への配慮が欠けている」状態です。
仕事の信頼にも関わる部分なので、「おざなりになっていないか?」と自分を振り返る指標としても使えます。
まとめ:おざなりを理解して使い分けよう
最後にポイントを整理します。
- 「おざなり」とは
→ その場しのぎで、形だけ整えたような、いいかげんなやり方 - 語源は
→ 江戸時代の芸者のもてなしの言葉から来たとされる - 「なおざり」との違い
→ おざなり:一応やるが雑
→ なおざり:ほとんど放置、おろそか
会話や文章の中で「おざなり」「なおざり」を使い分けられると、
自分の考えをより正確に表現できるようになります。
文章を書くときや、人の対応を評価するときに、
「これはおざなりではないか?」「なおざりになっていないか?」と
一度立ち止まって考えてみると、コミュニケーションの質がぐっと上がります。


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