要約
「釈迦に説法」は、すでにその道に精通した相手へ、改めて基本的なことを説く“余計さ”を表す慣用句です。実務ではへりくだりの前置きとして「釈迦に説法ですが…」と使われますが、多用は避け、簡潔に本題へ入るのがマナーです。
意味
- 既に詳しい人・専門家に、基礎的な説明や助言をすること。
- クッション語として自分の発言を和らげる効果がある。
ニュアンス
- 謙遜/配慮:相手を立てる前置き。
- 余計・蛇足:状況によっては「分かりきったことを言っている」自己ツッコミ。
由来(かんたん解説)
仏教の開祖・釈迦(ブッダ)は教えを説く側の象徴的存在。その釈迦に対してさらに法(教え)を説くのは無意味――というたとえから生まれました。
使い方のコツ
- 基本形:「釈迦に説法ですが、◯◯」
- 直後に要点のみを述べる(前置きが長いと逆効果)。
- 相手や場の格式によっては別表現に置き換える(後述)。
OK例
- 「釈迦に説法ですが、数字は一次情報で確認しています。」
- 「先生に申し上げるのは釈迦に説法でしょうが、念のため共有します。」
NG例
- 目下に多用する(不自然)。
- 長い説教の口火に使う(逆に圧が強い)。
- 冗談めかして専門家を試す使い方(失礼に響く可能性)。
ビジネスでの言い換え・クッション語
相手や文面のトーンに合わせて、角の立ちにくい表現へ置き換え可能です。
- ご高承のとおりですが
- 既にご承知かと存じますが
- 重ねてのご案内になりますが
- 念のため共有いたします(主観を抑えた中立表現)
メール・チャットの定型文テンプレート
定型1:最小構文
釈迦に説法ですが、◯◯の件は一次情報での確認が確実です。
定型2:丁寧・無難
ご高承のとおりかと存じますが、◯◯は◯月◯日にリリース予定です。念のため共有いたします。
定型3:差し込み型(提案前置き)
既にご認識の点かと存じますが、◯◯リスクを踏まえ、まず△△の整備をご提案します。
類義語・関連表現と違い
- 蛇足:付け足しが無駄という評価。
- 言わずもがな:言わなくても分かること。
- 馬の耳に念仏:伝えても効果がない相手に向けて。
- 講釈師、見てきたような嘘を言い:知ったかぶりを揶揄。
※「釈迦に説法」は相手を持ち上げる前置き、他は価値判断や相手評価が強めで使い分けが必要。
英語での近い言い回し
- This may be preaching to the choir, but …
- You know this better than I do, but …
- As you’re already aware, …(ビジネス無難)
使うべきか?判断チェックリスト
- 相手は当該分野の専門家または経験豊富か。
- 前置き後、新情報または必要な確認がすぐ続くか。
- 代替のクッション語の方が文脈に合わないか。
- 本題が長くならないか(冗長さの自省)。
ミニFAQ
Q1. 目上にも使ってよい?
A. 使えますが、多用はくどくなります。書面では「ご高承のとおりですが」等に置換すると角が立ちにくいです。
Q2. ユーモアとして使うのは?
A. 相手との関係性ができている場面に限り可。初対面や公式文書では避けましょう。
Q3. 口語では?
A. 「釈迦に説法だけど…」と崩す用法もありますが、社外では控えめに。
まとめ
- 釈迦に説法=「専門家に基礎を説く」から転じた謙遜の前置き。
- 使うなら短く、すぐ本題へ。
- 目上・文書では「ご高承のとおりですが」等に置換するのが安全。

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